維新を推進している諸藩の有志者は有為な人物であり、武士道に養われて活発ではあるものの、東洋の学問に疎く、儒学から見れば「無学と言わざるを得ず」という存在である。しかしながら、この儒学に対して無学の有志者こそが「維新の大事業を成し」たのであり、その彼らが「国を開いて文明に入らん」と望んだときに、目にふれたのが『西洋事情』であった。そして「これは面白し、これこそ文明の計画に好材料なれ」と彼らの心の拠りどころとなった。
そのことは、志を同じくする者たちに口コミで広がり、『西洋事情』は文明開化を求める者たちの座右の書となったのであろう、と、先生自身が分析しているのである。