三田キャンパス内に建つ三田演説館は、日本最初の演説会堂である。1875(明治8)年に建てられた歴史的建造物であり、大正時代には東京府から史跡に指定され、1967(昭和42)年に国の重要文化財の指定を受けている。建築時は現在の図書館旧館と塾監局の中間あたりに位置しており、今は少々わかりづらいが正門左手の小高い丘(稲荷山)に移築されている。
大公孫樹(おおいちょう)の前から大学院棟の脇を通ると見えてくる演説館は、グレーの地に白い斜め格子が入っているなまこ壁のたたずまいが、緑の下草に映えて美しい。歴史的建造物として、同じく重要文化財の指定を受けている図書館旧館が持つ威厳に満ちた雰囲気とはやや異なる。和洋折衷の造りのためか、それとも、建物自体がやや小ぶりのせいなのか、三田演説館はものものしさよりもどことなく、愛らしさを感じさせる。