福澤先生の『帳合之法』は、アメリカの商業学校で簿記の教科書として使われていた『Bryant & Stratton's Common School Book-keeping』を翻訳したものである。その「単式簿記編」が1873(明治6)年に、翌年には「複式簿記編」が刊行された。「貸方」「借方」などの簿記用語は、この翻訳書がもとになっている。
なお、1860(万延元)年、最初に渡米した際にウェブスター辞書とともに持ち帰った『華英通語』に、福澤先生がかなで発音と和訳を入れ、日本人向けに改訂した『増訂華英通語』を刊行したが、すでにこの中に多くの簿記用語が記載されている。福澤先生は簿記=会計学の重要性を、わが国でもっとも早い時期から認識し、社会に広めようとしていた人物といえるだろう。