趣味を中心とした草創期の団体としては、以下の2団体が知られている。
パレット倶楽部
明治31年に絵画愛好者が集まってできた団体で、同年11月には早くも展覧会を催している。創立当時、福澤から30円をもらって額縁を購入したというエピソードが残っている。
同32年からは、運動会に際して展覧会を催すと同時に、運動会の速報として発行される『三田の花』に挿絵を提供していた。また、絵はがきを描いて売っていたこともあったという。現在まで名称変更もなく続いている数少ない、伝統あるクラブの一つである。
ワグネル・ソサイエティー
音楽愛好者が集まって明治35年に設立され、夏休みには講習会を開いて練習に励み、大学倶楽部の例会に出席して演奏するなどしている。本団体も、名称変更なく現在まで続いている数少ない団体である。
以上のように、明治30年代の前半期は、学制改革を契機とした改革気運の中にあり、学生の自主独立の精神は各方面に発展し、学生数の増加と相まって、かなり活発な動きを見せていた。その中でもクラブの創設は、この時代における学生活動の大きな部分を占めていたのである。