“ペンの記章”といえば、慶應義塾の校章として知られている。制定のいきさつは、塾生有志の間で勝手に使われだしたものが、いつの間にか塾当局が公認するところとなり、明治33年には特に大学部の塾生に対して「記章附帽子」着用のことが告示され、ついに今日に至るというもの。いかにも義塾らしい鷹揚さが感じられる。
資料によれば「このペンの記章の創造者だと自称する人々の懐旧談によると明治18年頃のこと、塾生の有志数名がおそろいの洋服を新調し、帽子を着用するにおよんで得意然と闊歩してみせた。ところが、当時はまだそのような服装がいたって珍しく、留学生か何かと見誤られるといった滑稽もあって、早急に帽章の必要を感じ、ちょうどそのころの教科書(詳細不明)の一つに『ペンには剣に勝る力あり』という句があったところから、これこそ学生の記章として最もふさわしいものと考え、さっそくペンをつけることにした」という。
なお、この「ペンは剣よりも強し」の語句も義塾のモットーとして標榜され、それを表した三田の図書館の大ステンドグラスは、義塾を象徴するものの一つとなっている。