京都大学化学研究所 鈴木慎二郎 博士後期課程学生、山田容子 教授らの研究グループは、同研究所 廣瀬 崇至 准教授、慶應義塾大学理工学部 羽曾部卓教授、酒井隼人 専任講師、国立研究開発法人物質・材料研究機構 林宏暢 主幹研究員らとの共同研究により、炭素環が7つ連なった「ヘプタセン」の誘導体(TIPS-Hep)を新たに合成し、その光物理的性質の解明に成功しました。
ヘプタセンなどの高次アセンは、次世代の光電子材料として期待される一方、極めて不安定で溶解性が低く、その性質は謎に包まれていました。本研究では、光を利用して分子を合成する「光前駆体法」を用いた独自の分子設計により、ヘプタセン化合物の希薄溶液中室温での蛍光観測に成功し、孤立した分子が極めて短い励起寿命(~87ピコ秒)を持つことを見出しました。一方、薄膜中では、メゾスケールにおけるヘプタセン分子間の相互作用の制御により、1つの光子から2つのエネルギー(三重項励起状態)を生み出す「一重項分裂(SF)」が観測されました。ヘプタセン化合物において、最大75%の高効率で、相関三重項対(TT)を経由して三重項励起子(T1)を生成することを世界で初めて実証しました。本研究は、高次アセンの光物性の理解を深め、近赤外光を利用する光電子デバイス等の開発に向け、重要な設計指針を与えます。
本研究成果は、2026年2月5日にアメリカ合衆国の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。