慶應義塾大学大学院理工学研究科の博士課程3年 小暮悠暉、同大学理工学部生命情報学科の堀田耕司准教授、金沢大学 ナノ生命科学研究所の奥田覚准教授、北里大学 データサイエンス学部 岡浩太郎教授らは、脊索動物ホヤを用い、高解像度 3D 形態解析と数理モデルに基づくねじれ量の定量化により、胚発生期にみられる体軸回転が、「左向きの曲がり(Bending)」と「時計回りのねじれ(Twisting)」という、独立して制御される二つの運動が同時に進行する複合現象であることを明らかにしました。
体軸回転(AR)は、マウス、ラット、ニワトリ、爬虫類などの脊椎動物の初期胚に広く見られ、胚の形を形成するために重要な役割を果たす形態形成運動です。不思議なことに、この回転方向や回転角度は動物ごとに決まっていますが、これまでその幾何学的要素や方向性を制御する分子メカニズムは不明でした。
研究グループは、発生過程がシンプルかつ迅速で、少数の細胞で構成された胚をもつホヤ(Ciona robusta)の胚に着目し、体軸回転時の胚の精密な定量解析を行いました。その結果、体軸回転は「ねじれ」と「曲がり」の複合運動であり、「曲がり」は、Nodal遺伝子の発現パターンに依存し、左向きに決定される一方、「ねじれ」はNodalの発現パターンに依存せず、常に時計回りであることを特定しました。また、TGF-βシグナルを阻害すると、胚全体のねじれの向きはランダム化しましたが、胚の局所ごとのねじれの総量自体は野生型と同程度でした。すなわち、TGF-βはねじれそのものではなく、ねじれの方向の統一を担っている可能性が示唆されました。
本成果は、体軸回転という複雑な形態形成運動を、「曲がり」と「ねじれ」に分解し、分子的な制御との関連を明らかにしたものです。ヒトを含む脊索動物の初期胚において、非対称な構造が生じるしくみの解明につながると期待されます。
本成果は発生生物学の国際専門誌『Developmental Biology』2026年2月に掲載されました。