慶應義塾大学大学院薬学研究科の込山星河(元博士課程3年; 現フランシス・クリック研究所研究員)、同大学薬学部 髙橋大輔専任講師、長谷耕二教授(福島大学 食農学類附属発酵醸造研究所 特任教授 兼任)らを中心とする研究グループは、慶應義塾大学、福島大学、京都大学をはじめとする国内複数機関との共同研究により、腸内細菌が脳や神経の病気に関わる仕組みを明らかにしました。本研究では、腸管の「パイエル板」と呼ばれる免疫組織に存在するM細胞による、腸内細菌の取り込みが、多発性硬化症という難病の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE: Experimental Autoimmune Encephalomyelitis)の発症に重要な役割を果たすことを見出しました。
さらに、腸管でM細胞を経由して取り込まれた細菌の代謝物が、パイエル板内で特殊なT細胞(γδT17細胞)を活性化し、これらの細胞が脊髄へ移行することで脳脊髄炎が引き起こされるという一連の流れを明らかにしました。この成果により、腸内細菌叢の変化が神経の自己免疫疾患の発症リスクに影響するという考え方が、細胞レベルで具体的に示されました
本研究は、腸と脳・神経系が免疫を介して密接に影響し合う「腸–脳軸」の理解を大きく前進させるものであり、将来的には神経疾患の予防や治療法の開発につながることが期待されます。本研究成果は2026年1月9日に、国際学術誌Proceedings of the National Academy of Sciencesに掲載されました。