慶應義塾大学大学院理工学研究科の博士1年吉岡佑馬、同大学理工学部応用化学科の清水史郎教授、機械工学科の尾上弘晃教授らは、栃木県立がんセンターの尾島英知研究所副所長、公益財団法人微生物化学研究会微生物化学研究所第1生物活性研究部の川田学部長、大阪大学薬学研究科の近藤昌夫教授らと共同で、乳がんの「血管擬態」の抑制に関わる新たな遺伝子を見出しました。
乳がんは世界中で女性のがんによる死亡原因の上位を占めており、転移や悪性化の制御が課題です。本研究では、血管擬態に必須な細胞接着に着目し、接着関連タンパク質であるangulin-1/LSRとの関係性を調べました。その結果、細胞、マウスレベルにおいて、angulin-1/LSRの、これまで報告されていなかった特定のアイソフォームのみが血管擬態形成を抑制することを明らかにしました。さらに、その結果、正常組織に比べてがん組織で、この新規アイソフォームの発現量が減少しており、がん悪性化に寄与していることが判明しました。本成果は、乳がんの血管擬態診断分子としての利用が期待されます。
本研究の成果は、2025年8月27日に、Journal of Biological Chemistry誌で公開されました。