私たちの体の中では、鉄の働きによって細胞が壊れる「脂質の酸化」が起こることがあります。これが進むとフェロトーシスと呼ばれる細胞死が起き、肝臓などさまざまな病気の原因になることが知られています。ところが、これまでフェロトーシスを体の中で直接調べるには、肝臓の一部を取り出すような体に負担の大きい検査が必要でした。
京都大学大学院医学研究科附属がん免疫総合研究センターの松岡悠太 特定助教、杉浦悠毅 特定准教授らの研究グループは、慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センターの勝俣良紀専任講師、同内科学教室(消化器)の中本伸宏准教授、公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院 消化器センター 井口公太副部長らとの共同研究により、フェロトーシスが進むと「鉄の匂い分子」として知られる特殊な物質がガスとして細胞から放出されることを発見しました。この分子は、肝臓病のマウスだけでなく、脂肪性肝疾患の患者さんの呼気(吐いた息)からも検出されました。つまり、息を調べるだけで病気の進行を知ることができる可能性が示されたのです。この研究は、体に負担をかけずにリアルタイムで病気を調べられる新しい診断法につながると期待されます。
本研究成果は、2025年9月2日に蘭国の国際学術誌「Redox Biology」にオンライン掲載されました。