慶應義塾名誉教諭(慶應義塾横浜初等部非常勤講師)の相場博明、慶應義塾幼稚舎教諭の高橋唯と一般財団法人進化生物学研究所の斎藤光太郎氏らは、兵庫県新温泉町の約250万年前の地層から産出したチョウ化石を、タテハチョウ科オニミスジ属の新種として記載報告しました。日本から新種のチョウ化石の報告は、二年前の2023年10月に、群馬県の馬居沢層(約350万年前)からのタテハチョウ科ミスジチョウ属のものに続いて二番目の報告となります。
昆虫の化石は、化石の中でも稀とされていますが、その中でも特にチョウの化石は、極めて稀であり、世界中で成虫の化石は60個ほどしか産出していません。そのうち名前が付けられたものは40種ほどです。しかもその半分以上は19世紀の報告であり、今世紀の発見は今までわずか3個しかありません。
オニミスジ属の化石は世界初の報告であり、翅を広げた推定の長さが84mmと今まで産出しているチョウ化石の中では世界最大の大きさです。また約250万年前の鮮新世後期から更新世前期からの新種のチョウ化石も世界初で、世界で最も新しい時代のチョウの絶滅した化石種となり、チョウの進化を探る上での貴重な資料になります。
化石は37年前に地元の高校教師である故神谷喜芳氏により発見されたもので、地元の博物館である「おもしろ昆虫化石館」に保管されていました。そこで、化石には発見者の名前(カミタニオニミスジ)がつけられました。新温泉町からは多くの昆虫化石が見つかっていますが、新種として報告されたのは今回が初めてです。
本研究の成果は、2025年5月2日に、日本古生物学会の国際誌Paleontological Researchのオンライン版で公開されました。