慶應義塾大学大学院理工学研究科の柳澤 一輝(修士課程2年)と同大学理工学部物理学科の岡朋治教授、国立天文台、東京工業高等専門学校からなる研究チームは、ALMAで取得された天の川銀河中心核「Sgr A*」からの7年に渡る電波の強さを解析しました。その結果、2021年7月22日の観測において、非常に鮮明な52分周期の正弦波的な周期変動を見せたことを発見しました。この変動は、400万太陽質量の超巨大ブラックホールから0.3天文単位という極めて近傍を、光速の約1/3で回転する「ホットスポット」による相対論的ドップラービーミングに起因するものと解釈できます。その結果、降着円盤の傾斜角は約172°と制約され、我々はブラックホールを「ほぼ真下から」見ていることが判明しました。これはSgrA*のブラックホール周囲の幾何学構造と相対論的運動を直接的に示した新しい観測的証拠であり、ブラックホール物理の理解に大きな前進をもたらすものです。本研究成果は、12月1日発行の米国の天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal』に掲載されました。