慶應義塾大学大学院理工学研究科の小谷 竜也(博士課程1年)と同大学理工学部物理学科の岡 朋治教授、国立天文台からなる研究チームは、アルマ望遠鏡で過去に観測されたクェーサー「PKS1830−211」方向の公開データを詳細に解析しました。その結果、約70億年前に相当する赤方偏移z = 0.89 における宇宙マイクロ波背景放射(以下、CMB)の温度を 5.13±0.06 K と測定しました。この値は中間赤方偏移で得られたCMB温度の測定値としてこれまでで最も高精度なものです。さらにこの値は、現在の宇宙におけるCMB温度(約2.7 K)のおよそ2倍であり、「CMB温度が時間と共に(1+z)に比例して上昇する」というビッグバン宇宙論の基本予測と完全に一致します。したがって本測定値は、標準宇宙論の検証に重要な制約を与えるものです。
本研究成果は、10月29日発行の米国の天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal』に掲載されました。