国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院(所在地:東京都中央区、病院長:瀬戸 泰之)が中央支援機構(データセンター/運営事務局)を担い支援する日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG(ジェイコグ))では、科学的証拠に基づいて患者さんに第一選択として推奨すべき最善の治療である標準治療や診断方法等を確立するため、専門別研究グループで全国規模の多施設共同臨床試験を実施しています。
この度、JCOG食道がんグループでは、切除可能な食道がん(食道扁平上皮がん)に対する手術法として、従来の開胸手術と、より低侵襲で患者さんに負担が少ないと考えられる胸腔鏡下手術の生存期間を比較するため、国内多施設によるランダム化比較第III相試験注1を実施しました。
本試験の結果、胸腔鏡下手術を受けた患者さんの生存期間は、開胸手術を受けた患者さんに比べて劣らないことが示されました。また、食道がんの術後早期に呼吸機能低下を来す患者さんの割合が、胸腔鏡下手術を受けた患者さんで低いことが示されました。これらの結果から、胸腔鏡下手術は切除可能な食道がん患者さんに対する標準治療の一つになることが示されました。
食道がんの手術は頸部・胸部・腹部と広範囲に及ぶため患者さんの心身への負担が大きく、より低侵襲な手術が求められています。本研究成果により、食道がんに対する低侵襲外科治療の選択肢が広がるとともに、患者さんの術後の回復が早まり、QOL(生活の質)の向上にも繋がると考えられます。
本試験の結果は、胸腔鏡下手術の長期成績に関する世界初の知見として国際的にも高く評価され、世界的に権威のある英国学術雑誌「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に2025年10月14日(英国時間10月13日)付で掲載されました。
JCOGでは、がん患者さんにとっての最善の医療を確立するための臨床試験を今後も行ってまいります。