近年、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、およびビッグデータ解析の発展に伴い、高速かつ大容量な不揮発性メモリ(NVM)の需要が急増しています。このニーズに応えるべく、素子構造が単純な相変化メモリ(PCRAM)が注目されています。既存のPCRAMの情報記録層には、カルコゲン元素であるテルル(Te)をベースとした相変化材料(PCM)が用いられていますが、PCMのアモルファス相化に大きな熱エネルギーを必要とするため動作電力が高いといった課題があります。
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の双逸助教、同大学大学院工学研究科の須藤祐司教授(兼材料科学高等研究所)、慶應義塾大学理工学部のポール フォンス教授らの研究グループは、クロム窒化物(CrN)が高速ジュール加熱により、ナノ秒での相変化が誘起され、電気抵抗が大きく変化(5桁以上変化)することを発見しました。このCrN系PCMは商用のゲルマニウム・アンチモン・テルル(Ge-Sb-Te(GST))系PCMと同様に高速で動作し、動作エネルギーを1桁低減できます。切削工具用の硬質被膜としても知られるCrNは化学的に安定しており、カルコゲナイド系PCMよりも環境に優しく、新たなグリーンメモリ材料として期待できます。
本成果は、米国化学会誌ACS Nanoに 2024年8月1日(現地時間)付で掲載されました。