慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の阿部欣史特任助教、田中謙二准教授らと、東北大学、実験動物中央研究所、東京大学、新潟大学、電気通信大学の共同研究グループは、光照射によって脳内局所血流を自由に増加・減少できる操作技術を開発し、マウスに実装しました。光操作の結果、脳血流が時間経過とともにどのように変化するか(タイムコース)、かつどのような空間的な広がりを持つのかを具体的に示し、人為的に操作された脳内血流変動が神経活動やマウスの行動に反映される具体例を示しました。
神経活動の増加に伴って脳内の局所血流が増加することは広く知られています。また脳梗塞などの不可逆的な血流遮断が脳の機能を障害することもよく分かっています。しかし、可逆的・局所的な血流変化が、神経活動を具体的にどのように変化させ、行動をどのように変化させるのか分かっていませんでした。そこで研究グループは、オプトジェネティクスと呼ばれる技術を血管に適用し、脳血流を光で操作する技術を開発しました。その結 果、麻酔なしで、自由に行動するマウスの脳血流を操作することが可能になりました。ヒトの脳血流検査で報告されるさまざまな病態をモデル動物で模倣させることが可能になり、病態を理解することや、血流をターゲットにした治療法を開発することが期待されます。
今回の研究成果は、2021年7月27日(米国東部標準時)に『Cell Reports』のオンライン版に掲載されました。