慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻の博士課程学生谷智行(研究当時)、同大学理工学部物理学科の白濱圭也教授、永合祐輔助教らの研究グループは、ナノ多孔体(ナノメートルサイズのスポンジ状細孔を持つガラス材料)に閉じ込めた液体ヘリウムが、4次元XY型と呼ばれる超流動相転移を起こすことを明らかにしました。空間的には3次元でありながら、4次元の相転移を示す物質が現実に見つかったことになります。
相転移現象は「普遍性クラス」と呼ばれるカテゴリーに分類され、通常の液体ヘリウムは3次元XY型の普遍性クラスに属します。またヘリウムの薄膜は2次元XY型のBKT超流動相転移を示すことが知られていました。ナノ多孔体中ヘリウムは絶対零度で4次元XY型の量子相転移を示すことは本研究グループの過去の研究で知られていましたが、本研究で通常の温度で起こる超流動相転移も4次元的であることが初めて明らかになりました。4次元相転移は理論的には最も単純な相転移であり、その発見は相転移現象の理解に大きく貢献すると期待されます。
本研究成果は、2021年3月に日本物理学会英文誌「Journal of the Physical Society of Japan」に掲載され、同誌の注目論文Editors’ Choiceに選定されるとともに、英文サイトJPS Hot Topicsに取り上げられました。