北海道大学大学院医学研究院組織細胞学教室の木村俊介助教、慶應義塾大学薬学部の長谷耕二教授らの研究グループは、腸管(小腸と大腸に分けられる消化器官)の免疫が働くために重要な「M細胞」の抗原取り込み機能の獲得が、転写因子Sox8によって制御されることを発見しました。
腸管内には食事や腸内細菌由来の抗原が存在し、ときに細菌の感染部位となります。特に免疫が未発達な乳幼児は感染症にかかりやすく、この時期における免疫系の発達は重要な研究テーマです。乳児期は母乳から抗体を取り入れることができますが、母乳由来の抗体が途絶える離乳期には免疫の空白期間ができるため、自身の免疫系をすみやかに確立する必要があります。
M細胞は腸管の内部を覆う上皮に存在し、抗原を取り込む細胞です。免疫系が活性化し抗体が作られるためには、M細胞に取り込まれた抗原に免疫系がさらされることが重要です。しかし、M細胞が取り込み機能を獲得するしくみは多くが未解明のままでした。
研究グループは、遺伝子発現を制御する転写因子のひとつであるSox8がM細胞に存在していること、Sox8を持たないマウスではM細胞の取り込み能力が低下していることを見いだしました。さらに、このSox8欠損マウスでは分泌型IgA抗体の離乳後の産生能力が、正常なマウスと比較して顕著に低下していました。これらの結果から、M細胞による腸内抗原の効率的な取り込みは、離乳後の抗体の空白期間を埋めるために重要であることが明らかになりました。
なお、本研究成果は、2019年3月15日(金)公開のJournal of Experimental Medicine誌に掲載されました。
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