慶應義塾大学医学部生理学教室の桑子賢一郎特任准教授と岡野栄之教授は、神経細胞がその神経突起を正しく空間配置し、機能的な神経回路網をつくるための重要なメカニズムを発見しました。
精巧な脳神経回路網は、運動・知覚・学習・記憶などのさまざまな脳機能を担う基盤であり、その異常は精神疾患などの多くの病気の要因となるとされています。神経回路網が正しくつくられるためには、それぞれの神経細胞が発生の設計図に従って神経突起を適切にかたちづくり、適切に接続されることが必須となります。他の神経細胞から信号を受け取る働きを持つ樹状突起は、複雑に分岐した形状であり、これらが互いに交差しないように空間配置されることで正しい回路接続が可能になります。しかし、これまで樹状突起の空間配置を制御する仕組みは多くが謎のままとなっていました。今回、運動制御を担う神経細胞であるマウス小脳プルキンエ細胞をモデルとして実験を行った結果、リン酸化酵素LKB1が細胞表面分子の樹状突起への配置を制御しており、これにより樹状突起の交差や接触が防がれ樹状突起の正しい空間配置が確立されていることを発見しました。
本研究は、神経突起の機能的なかたちづくりにおける分子機構を明らかにし、また、今後のiPS細胞を用いた神経再生医療において、形態制御を介し移植神経細胞の機能向上に貢献することが期待されます。
本研究成果は「Cell Reports」オンライン版で2018年9月11日(火)(米国東部時間)に公開されました。
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