慶應義塾大学理工学部化学科の角山寛規 専任講師、および中嶋敦 教授 (慶應義塾基礎科学・基盤工学インスティテュート主任研究員)らは、京都大学化学研究所 水畑吉行 准教授、および時任宣博 教授(同研究所長)らと共同で、気相中で生成させた化学種を液体中に直接打ち込むという新たな手法を開発して、金属原子1個を内包したシリコン原子16個からなるケージをもつ球形の「金属内包シリコンナノクラスターM@Si16」を大量合成し、構造決定することに成功しました。
数個から千個程度の原子・分子が集合したナノクラスターは、原子・分子より大きく、またバルクよりも小さく、そのどちらとも違った性質や機能をもっています。その性質が、原子数や組成、荷電状態によって制御できるため、触媒、電子デバイス、磁気デバイスなどへの応用が期待されています。特に、エレクトロニクス分野では、シリコンなど半導体材料のナノクラスター1つ1つを積み木のように組み上げて、新たな機能をもつ超微細集積構造を生み出す技術が注目されています。しかし、これまで気相合成されたナノクラスターの生成量が極めて微量であったため、その構造を材料応用の視点から評価することは極めて困難でした。
本研究グループは、チタン(Ti)やタンタル(Ta)の金属原子を内包させたTi@Si16、Ta@Si16を大量に気相合成し、ポリエチレングリコールの液体中に打ち込むことで化学的精製を行いました。また、その構造を評価し、その結果、これらのナノクラスターがこれまでのシリコン化合物にはない新たな結合様式をもつ、かご型構造であることを明らかにしました。これらの結果は、太陽電池や電子デバイスの基盤技術として利用価値が高いと考えられます。
本研究成果は、2017年8月28日(米国時間)付けで米国化学会の学術誌「J. Phys. Chem. C」オンライン版に公開されました。
プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。