12月14日(火)慶應義塾の伝統行事である三田演説会が開催されました。約2年ぶりの開催となる第710回講演は、「鳥の渡りと地球環境の保全」というテーマで、東京大学名誉教授/慶應義塾大学自然科学研究教育センターの樋󠄀口広芳訪問教授が講演を行いました。本会は例年、三田演説館を会場にしていますが、新型コロナウイルスの感染拡大防止に最大限配慮するため、今回は三田キャンパス北館ホールにて、距離を取って着席する形式で実施しました。
鳥類学の第一人者である樋口教授は、近年、人工衛星を利用した「衛星追跡」などにより、鳥の渡り研究は飛躍的に進展し、その実態が明らかになってきたことについて述べ、地球の温暖化や気候変動、人為的な環境破壊などが、世界各地を移動する渡り鳥たちの生態系にもたらす影響や、渡り鳥たちがさらされている環境問題について事例を挙げて紹介しました。また、渡り鳥を通して人と人とがつながり、生態系全体の保全を進めるためには、地域の視点だけではなく地球規模の視点を持つ必要があることを強く述べました。
講演後の質疑応答では、渡り鳥に関する最新の研究に触れ、興味を深めた聴講者による質問も活発に行われ、樋口教授はひとつひとつの質問に丁寧に答えていました。今後の自身の活動についても、教育、研究、啓発活動全般においてますます意欲を持ち進めていきたいと語りました。
なお、講演録は慶應義塾機関誌『三田評論』2月号に掲載予定です。
参考:第710回三田演説会の動画を公開(2021/12/27)