慶應義塾

「古くて新しい」国際刑事法

執筆者プロフィール

  • フィリップ・オステン

    法学部 法律学科教授(国際刑事法)

    フィリップ・オステン

    法学部 法律学科教授(国際刑事法)

国際刑事法とは何か?

国際刑事法は、日本では講座が設置されている大学がまだ少なく、慶應義塾でしか学べない科目の一つであるといえます。国際刑事法には、広義の国際刑法と狭義の国際刑法という二つの側面があります。前者は、「国際法の刑事法的側面」(国際社会全体の関心事たる「中核犯罪」の訴追・処罰など)、後者は、「国内刑事法の国際的側面」(刑法の場所的適用範囲、刑事事件における外国との協力など)を扱う学問領域です。

広義の国際刑法――戦争犯罪・国際法廷と日本

広義の国際刑法では、ナチス・ドイツによるホロコーストや日本の戦時中の犯罪とその後のニュルンベルク裁判・東京裁判、冷戦後の旧ユーゴスラヴィアやルワンダにおける虐殺、現在ニュースを賑わせているいわゆる「イスラム国」など、最も重大な犯罪である中核犯罪――ジェノサイド罪・人道に対する犯罪・戦争犯罪・侵略犯罪――の責任者をどのように訴追・処罰すれば良いのか、という難題を扱います。2002年に創設された国際刑事裁判所(ICC)では、目下、コンゴ民主共和国やスーダン・ダルフール地方などにおいて発生した事件の審理が進められており、2014年には上訴審で有罪判決が初めて確定しました。そんな中、2007年にICCに加盟した日本は、これまでのところあまり存在感を示せていません。本授業では、戦後に東京裁判を経験した日本だからこそできる貢献についても考えます。

狭義の国際刑法――刑事司法のグローバル化

狭義の国際刑法では、日本人が海外で遭遇する犯罪や日本での外国人犯罪を題材に、刑法の適用範囲の問題から、犯罪人の引渡し、外国との捜査協力、受刑者の母国への移送に至るまで、幅広く勉強します。加速度的にグローバル化が進行している現在、従来の刑事司法制度では対応しきれない問題が数多く生じています。インターネットを利用した犯罪や外国人被疑者の国外逃亡の問題などがその最たる例です。このような問題を抱える日本の刑事司法はどのような変革を遂げていくべきか――授業に参加している全員でアイディアを出し合います。