慶應義塾

師匠を探せ!そしてまずは1科目を制覇せよ!

執筆者プロフィール

  • 駒村 圭吾

    法学部 法律学科教授(憲法、言論法)

    駒村 圭吾

    法学部 法律学科教授(憲法、言論法)

 日吉で憲法(総論・人権)を担当しています。必修ですので、みなさんが、法律学科に入学されると2分の1の確率で私の授業を履修することになります(笑)。1年次配当の必修系の法律科目を担当するのは、新しい新入部員を迎えるクラブの主将のような気分でとてもワクワクして楽しいのですが、同時に、その責任の大きさに毎年身がひきしまる思いになります。1年次の必修は、学部生が出会う「最初の法学の世界」であり、この出会いがうまくいくかどうかで学部での4年間が決定されるからです。法学が好きになるのも嫌いになるのも、この出会い次第なので、必修科目担当教員の責任は限りなく重いのです。

 みなさんが最初にその扉をたたくのは、民法、刑法、憲法の基本3法です。民法は、ヨーロッパとりわけフランスの香りがする法律です。私たちの日常生活のほぼすべてを規律する法律で、人と物に関する神羅万象が詰め込まれた重要法典です。

 刑法は、罪と罰に関する法律で、生々しいリアルな事例を扱います。しかし、生々しさやおどろおどろしさも吹っ飛ぶような峻厳で冷徹なドイツ流の論理と哲学で、問題を料理してくれます。法律学に素人を寄せ付けないロジックを期待する学部生は、たいてい刑法好きになります。

 さて、私が担当する憲法は「政治や権力を規律する法」です。政治も権力も、取引や契約という日常とも、犯罪や刑罰という非日常とも、若者にとっては馴染みが薄く、大きく距離のある抽象的な世界のように見えます。しかし、実は、政治も権力も、極めて深刻なリアリティを持つ劇的な現象です。戦争や殺戮が、ウクライナやパレスチナの惨劇のように、これほど日常的に報道されることがあったでしょうか。金権体質や腐敗の構造が政治関連ニュースにならない日はありません。21世紀の現在でも、尊厳を認められずに社会から排除された人たちはたくさんいます。

 そう、憲法は、政治や権力がリアルな話題であることを知るためにも、大学生には必須の教養なのです。また、「世界を知りたい、社会を理解したい」という学部生にとっては世界や社会を見通すためのフレームワークを提供するのも憲法の授業の重要な役割です。

 ここで、みなさんにアドバイスです。上に見たように、民法、刑法、憲法の3科目だけとっても、それぞれ違いがあります。しかし、そうであっても、法学である以上、どこか共通する部分も多くあります。判例を大事にすること、条文の言葉にこだわること、法的三段論法という「作法」や「型(カタ)」があること、等々。これらは法学一般の鉄則ですので、科目の違いを超えて、身に着けていただきたいと思います。

 ですので、まずは1科目を制覇しましょう。自分の興味をそそる科目、自分が気に入った教員、理由は何でもいいので、とにかく1科目を定め、徹底的に付き合い、しっかりノートをとってみてください。他の科目にも通用する作法が身に着いているはずです。その意味では、法学はどの入り口から入ってもおなじところに行きつく学問です。