イラクに赴任時はいわゆるイスラム国(ISIS)との戦乱で多数発生した国内避難民の支援を担当しました。このときの避難民は数十万人規模となり、それだけの人数を受け入れるキャンプを作り運営していくことは大事業で、私にとっても最大のプロジェクトでした。その後、自ら希望してスイス・ジュネーブにあるIOM本部に勤務します。支援の現場で仕事をしてきたこともあり、組織マネジメントについての経験を積みたいと考えたのです。
-2020年9月にIOM駐日代表に就任されました。
望月:日本の事務所は40年ほど前のインドシナ危機で発生した難民の保護と第三国への再定住を支援するために開設されました。現在は重要なドナー(援助供与)国である日本政府との良好な関係をさらに強化する活動のほか、帰国の意思を持ちながら、経済的な理由などでその願いを果たせずにいる移民に対しての自主的帰国支援、日本への定住を希望する難民の第三国定住支援、さらに移住労働者の権利を守るために企業の人事部門などと連携した研修活動なども行っています。駐日代表になってからは久しぶりの日本での生活も楽しんでいます。妻が福島県の米作農家出身なので、田植えや稲刈りシーズンには農作業の手伝いをしています。妻はジンバブエではいろいろな野菜を作っていました。赴任先の生活に適応してくれた彼女の協力があったからこそ、私はこれまで仕事を続けてこられたのだと感謝しています。実は次の赴任先はもう決まっていて、今年7月末にミャンマー事務所代表に就任予定です。
-IOM職員として仕事をする上で大切にしていることは何ですか。
望月:やはり現地の人々の生活や文化をしっかり把握することだと思います。マイノリティの気持ちについても「もし自分がその立場だったら」と考えてみることが大切でしょう。また、治安が不安定な任地では、常に緊張感の中で仕事をすることになりますので心身の自己管理能力は重要です。私もソマリア時代には、知らず知らずのうちに体力的・心理的なダメージを受けていました。