社会人になってからの名人戦では、OB・OGや大学の後輩たちが力を貸してくれました。その一人が望月仁弘君でした。望月君は種村君との名勝負が語り継がれている後輩です。
第33期名人戦。社会人となった名人、種村君に対して挑戦者は塾生の望月君。慶應OB 対 現役生の戦いは当時、話題となりました。結果は、種村君の圧勝。その後、種村君は永世名人に、9年後の96年には再び望月君が勝ちあがって挑戦者となり、今度は望月君が名人位を奪取しました。
「卒業して10年経っていましたが、先輩や後輩など慶應義塾の人たちが稽古相手になってくれて、しっかり練習することができました」(種村君)
望月君をはじめとする名選手たちとの稽古の甲斐もあり、2度目の名人位奪取を果たすことができたと言います。
現在は日本経済新聞社デジタルビジネス局上席担当部長として活躍する種村君。「かるた会」にいたことがビジネスの相手との話題づくりに役立つこともあるそうです。
「ビジネスのシーンでは、場を和ませるための雑談が必要になることがあります。面談相手との会話がつまり、場の空気が重くなりそうときなど、競技かるたをしていたことが一つのネタになったりします。競技かるたが今ほどメジャーではなかった頃、まずは競技方法の説明から入ったりして、その場の緊張感がやわらぐこともありました。また、ある物事に対して全力で取り組んだという経験も、今の自分につながっていると感じます」(種村君)
熱い闘志と冷静な判断力が「慶應かるた会」の伝統。この系譜を守る後輩たちの活躍を、OBたちが卒業後も見守っています。