登場者プロフィール
大鳥 由香子
文学部 英米文学専攻 准教授大鳥 由香子
文学部 英米文学専攻 准教授
2026/10/31
本学では英語科目を担当していますが、日本ではアメリカ研究、米国では歴史学の分野を専攻しました。歴史研究の道に進むことになったきっかけの一つは、学部時代の交換留学です。米東海岸にあるリベラル・アーツ・カレッジで過ごし、手稿の史料を分析する機会を得ました。この頃はキリスト教史に特に関心がありましたが、その後の大学院留学を経て、研究対象を大きくひろげていくことになりました。
現在進めている研究プロジェクトの1つは、19世紀後半から1920年代にヨーロッパから米国に渡った子どもの移民をめぐる法文化史です。例えば、欧米で児童福祉への関心が高まると、移民の子どもが大人の付き添いなしに大西洋をわたり、米国に入国することは禁止されるようになりました。しかし、当時は暦の普及も限られ、多くの人々は自分がいつ生まれたのかを明確に把握していませんでした。そのため、誰が子どもなのかを判断するのは簡単ではなかったのです。現在執筆中の著書では、米国国境において子どもと大人の境界線がどのように変化したのかなどを議論しています。この他にも、19世紀の米国における日本人留学生や感情史、動物園史、医学史など、学部生のころには想像もしなかったテーマに取り組んでいます。ささやかな発見や偶然の出会いから、考察を深め、新しい知見を得るというのは大いなる喜びです。
過去をよりよく理解するための歴史学は、常に現在との対話を促すものです。また、誰が、誰に向けて、どのような場で、どの言語を用いるのかによっても、「歴史」として語られる内容は変わってきます。私自身は英語を読み、話し、書く時間が長いとはいえ、母語である日本語が思考や生活から失われてしまうことはありません。常に複数の言語に囲まれ、その狭間で生きることは、さまざまな葛藤を伴います。その葛藤に怯むことなく誠実に向き合い続けることこそ、文学部の学びなのではないかと思います。
※所属・職名等は取材時のものです。