慶應義塾

言葉の奥にある世界を開く/拓くフランス文学研究

登場者プロフィール

  • 川村 文重

    文学部 仏文学専攻 教授

    川村 文重

    文学部 仏文学専攻 教授

2026/10/31

文学部フランス文学専攻では、言語学と、中世から現代までのフランス語圏の文学や思想、文化などを幅広く学びます。その中で私は、18世紀フランス文学と思想史を専門にしています。

フランス文学を研究するとは?

高校の国語科目では、文学作品の内容や作者の意図など、あたかも一意の客観的な正解が存在するかのように問題を解く訓練がなされます。しかし大学での文学研究は、その「客観」や「正解」という前提そのものを疑うことから始まります。正しい解釈とされる枠組みを批判的に問い直し、時代背景や作品構造を読み解くことで自らの解釈を提示する――この「批評(クリティック)の実践」こそが、フランス文学研究の真髄です。

ひとつの言葉から作品と時代を照射する

私自身は、18世紀の作家ディドロの思想と文体の解明、および当時の「エネルギー」概念の思想史研究を行っています。

ディドロは18世紀啓蒙思想の金字塔とされる『百科全書』の編集者として名高いですが、文学・美術批評・自然哲学・医学など多岐にわたる領域で傑作を残しました。とりわけ私が着目するのは、ディドロに限らず当時において、自然科学と文学という二つの領域が地続きで密接に関わり合っていることです。そして、この両者を媒介していたのが、「エネルギー」という言葉でした。

当時の言葉には現代と語意が異なるものがあり、さらにディドロ独自の用法も存在します。この点に着目した作品分析や、エネルギーという言葉の語意分析を通して、作品の奥に潜むメッセージや新しい解釈が見出せた時、ディドロや18世紀という時代と時空を超えた対話を交わせたという、なにものにも代え難い喜びが得られます。

古典の持つエネルギー

古典は向き合い方次第で、退屈な「正解」を学ぶ遺物ではなく、私たちの固定観念を揺さぶる、まさに「エネルギー」の塊のようなテクストに変貌します。独自の視点を鍛え、この知的なスリルを大学で体感してほしいと願っています。

川村先生

※所属・職名等は取材時のものです。