慶應義塾

『新しい図書館でイベントを企画する──石川県立図書館の挑戦』

公開日:2026.09.14

執筆者プロフィール

  • 田村 俊作(監修)(たむら しゅんさく)

    石川県立図書館長名誉教授

    田村 俊作(監修)(たむら しゅんさく)

    石川県立図書館長名誉教授

本書の舞台であり、私が館長を務める石川県立図書館のことは、新館が開館した2022年の本誌11月号「丘の上」に、「本のテーマパークのような図書館」として紹介した。


円形の大閲覧空間が広がる巨大な吹き抜けの建物、100種類もの椅子やソファ、館内を飾る伝統工芸品や工芸作品が美術館のような雰囲気を醸し出している。円形空間の本は、当館独自の分類に沿って表紙を見せて並べられ、私たちが関心を持つテーマから本と知識の世界へと誘っている。また、おしゃべり自由、写真撮影自由な開放的な雰囲気の図書館なので、赤ちゃん連れから高齢者まで、誰でも気兼ねすることなく本を見て歩くことができる。


イベントもまた当館には重要なサービスで、主催・共催だけでも年間300回を超すイベントや展示を行っている。その中には、作家のトークショーのような本に関連したものもあるが、県立美術館や県立歴史博物館の企画展示に合わせて、それぞれから借りた展示物と当館所蔵資料を併せて展示し、関連する講演会を開催するものや、地元サッカーチームの試合のパブリックビューイングを行い、併せて選手お薦め本を展示するといった、図書館らしくない企画も数多く行っている。


本書ではこうしたイベントに焦点を当て、企画から開催結果までのプロセスを順を追って書いている。また、現場で実務に携わった職員の視点から、新館の計画から開館後まで、作業の実際、工夫した点、苦労した点などを整理して書いている。例えば、旧館から新館に本を引越す作業では、新館の棚に110万冊の本がきちんと収まるよう、綿密な計画と正しい計算が必須であったとしつつ、それでも齟齬が出てきたと書いている。イベントでは、参加者が1人しかいなかったものなど、失敗例も紹介している。


本書は主に図書館や自治体の図書館行政に関わっている人たちに向けて書かれたものだが、読みやすい、単なる実務書や成功話に終わっていないので一般の人にも面白い、との声もいただいている。5月30日には、本書をテーマに執筆者たちによるトークイベントを開催した。冗談のような企画だが盛り上がった。


『新しい図書館でイベントを企画する──石川県立図書館の挑戦』
田村 俊作(監修)(たむら しゅんさく)
勁草書房 200頁 2,970円〈税込〉

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。