慶應義塾

『ソーシャルメディアの倫理的デザイン──未来のための再構築』

公開日:2026.09.07

執筆者プロフィール

  • 河島 茂生(編)(かわしま しげお)

    青山学院大学総合文化政策学部教授総合政策学部 卒業

    2002総

    河島 茂生(編)(かわしま しげお)

    青山学院大学総合文化政策学部教授総合政策学部 卒業

    2002総

ソーシャルメディアの現状に、戸惑いを感じている人は少なくないだろう。誹謗中傷、ネット炎上、偽情報・誤情報・陰謀論、アテンション・エコノミー、監視資本主義など、深刻な問題が積み重なっている。かつて人々をつなぎ、個人の声を広げるものとして期待されたメディアは、いまや社会の対立や不信の場にもなっている。


技術が発展すると、それまで存在しなかったルールの空白が生まれる。ソーシャルメディアも、まさにその空白への対応を迫られている。もちろん、実効性のある法規制は必要である。しかし、法規制だけで十分なわけではない。法規制に根拠を与え、法規制の隙間を埋め、私たちが何を大切にすべきかを問い直す倫理が必要になる。倫理がなおざりにされている現在だからこそ、倫理を語る意義は大きいのであり、法規制が進みつつある現在だからこそ、その根拠を議論する必要性もまた大きい。


本書は、公益財団法人上廣倫理財団主催の「ソーシャルメディア依存社会研究会」の成果である。ここでいう依存とは、個人の心の問題だけを意味しない。現代社会そのものが、ソーシャルメディアを基盤(インフラストラクチャ)として成り立っているという意味である。本書では、研究会の成果として、単なる「使い方」の問題にとどまらず、リテラシー、アーキテクチャ、アーカイブ、社会的対立、心、意味実現をめぐる議論をまとめた。


本書でいうデザインとは、神の眼で外から社会を設計することではない。私たち自身がすでにこのメディアに関わっている以上、その内側から観察し、問い直し、より望ましい秩序をつくっていく実践である。ソーシャルメディアは、そこにただ「ある」ものではない。私たちを含む多くの人が、日々の実践のなかで「つくる」ものである。ソーシャルメディアの倫理的デザインは、次世代にどのような情報環境を手渡すのかという、私たち自身の責任にもつながっている。多様な現場で社会を支えている『三田評論』の読者の方々にも、本書を手がかりに、ソーシャルメディアのあるべき姿、そしてデジタル社会の未来をともに考えていただければ幸いである。


ソーシャルメディアの倫理的デザイン──未来のための再構築
河島 茂生(編)(かわしま しげお)
岩波書店 256頁 3,080円〈税込〉

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。