執筆者プロフィール
峯島 宏次(共著)(みねしま こうじ)
文学部 教授峯島 宏次(共著)(みねしま こうじ)
文学部 教授
本書は、慶應義塾大学名誉教授の岡田光弘先生との共著であり、「論理学の入門の入門」を目指して執筆した。第一部「意味の世界から論証の世界へ」では、人狼ゲームや古典落語の「風が吹けば桶屋が儲かる」といった身近な推論を題材に、論理学への入り口に立つことを目標としている。第二部「論証の世界から計算の世界へ」では、入門の一歩先にある「計算とは何か」という問いへ進み、現代のコンピュータの誕生にもつながる基本的な考え方を紹介している。
論理学は大学ではじめて学ぶことが多く、記号が登場するため難解な学問と思われがちだ。しかし、論理は私たちが無意識のうちに身につけている言葉の意味の知識と地続きにある。たとえば、「太郎しか来ない」という表現は、否定の「ない」を含むが、「太郎だけが来る」と言っていることとほぼ同じであり、「太郎は来ない」とは矛盾する。このように私たちは、同じことを言っているのか、異なることを言っているのか、矛盾することを言っているのかを、特に意識することなく見分けている。外国語として学べば膨大な労力を要するこうした意味の知識を、私たちは自然に身につけ使いこなしているのである。
本書で強調したのは、私たちが日常生活の中でも常にこうした推論を行っているという点である。しかし、その延長線上にある論理は、私たちの直観を裏切ることもある。たとえば、「宿題を提出した人はみな合格だ」という発言に対して、「宿題を提出していないのに合格した人がいる」と反論しても、論理的には両者は矛盾しない。こうした論理の「罠」は、慎重に時間をかけて考えればわかるが、日常の一瞬の判断では容易に見抜けない。
論理学の入り口で立ち止まっている人や、そこに高いハードルを感じている人に、「入り口の鍵」を手渡すことを目指した。私たちの日常に潜む推論や言葉の意味の違い、あるいはそこから生じる誤解や対立を手がかりに、現代論理学の豊かな広がりに触れてもらえれば幸いである。
『誰でもいつでも論理学──本当にわかるための〈入り口の鍵〉』
峯島 宏次(共著)(みねしま こうじ)
慶應義塾大学三田哲学会叢書 144頁 990円〈税込〉
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。