慶應義塾

流れを読む力と、人をつなぐ熱量。好奇心のままに踏み出した先に、世界の最前線がある。

Profile

機械工学科(総合デザイン工学専攻 修士課程1年【※】)

東京都・慶應義塾高等学校出身

競泳部で練習に打ち込んだ高校時代。しかしコロナ禍で部活が突然ストップしたことで、パソコンと向き合う時間が生まれました。3Dアニメーションソフトやプログラミングに親しむうちに、物理現象をデジタル空間で再現するシミュレーションの面白さに目覚め、理工学部への進学を決意。大学では流体力学の魅力に惹かれ研究に没頭しました。また、交換留学の経験から、帰国後には矢上キャンパスの国際交流を促進する学生団体を発足。今夏からスウェーデン王立工科大学へのダブルディグリー留学を控えるなど、常に自らのコンフォートゾーンの外へと飛び出し続けています。

【※】インタビュー時点(2026年6月)の在籍学年です。


コロナがもたらした偶然の出会いから、理系への道が拓けた。

高校時代はどのように過ごしていましたか?

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競泳部に所属しており、週6、7日練習するほど熱中していました。しかし、高校2年生の時に、コロナウイルスの影響で部活が中断に追い込まれました。突然できた空き時間に戸惑いつつも、コロナ給付金を活用してノートパソコンを手にいれ、ふと思い立って、アニメーションやプログラミングを勉強し始めました。まずはじめに、3Dアニメーションソフト「Blender」などを触り始めて。もともとMinecraftやレゴ、プラモデルが好きだったこともあり、デジタル空間でのものづくりには興味を持っていたんです。YouTubeを見ながら、身近なアイテムをパソコンの中に再現するなど、独学で楽しんでいました。
その後、プログラミング言語「Python」にも挑戦して、物理現象をコンピューター上で仮想的に再現するシミュレーションが面白いと感じるようになりました。このことがきっかけとなって、ぼんやりと理工学部に進みたいと思い始めました。

もともと理系科目が得意だったんですか?

いえ、実はあまり得意な方ではありませんでした。だから、高校3年の夏の最後の水泳大会で目標タイムを達成し、MVPをもらえてからは、部活に区切りをつけ、理系科目の勉強に全力投球しました。

慶應義塾大学理工学部に進学を決めた理由を教えてください。

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学校説明会での理工学部生の印象が大きいですね。理工学部の学生は自分の研究を本当に楽しそうに話していて、とても生き生きしていました。コロナ禍に芽生えたシミュレーションへの興味と、身の回りの現象を数式で捉える物理への関心が重なり、理工学部への進学を決めました。

学科の強みをフル活用。国際化の波に乗って、世界での学びに挑戦。

機械工学科の特徴を教えてください。

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一番の特徴は「国際化」と「挑戦を応援する風土」だと思います。
機械工学科は、海外留学や進学を目指す学生も多いです。また、他学科に比べて交換留学のオプションが圧倒的に多く、留学を強く推奨している教授が多い印象です。私の所属する深潟研究室でも、同期6人のうち3人が留学予定です。
また、「挑戦を応援する風土」として象徴的なのは、学部2年次に行う創造演習です。この授業は、個人の興味に沿った自由なテーマで取り組めます。前例のない奇抜なアイデアでも、論理的な裏付けがあれば教授が面白がって全力で背中を押してくれる。工作技術センターの設備や材料費の支援も手厚くて、構想を形にするための環境が本当に整っています。企業と学生が共同でものづくりに取り組む「ものづくりプロジェクト」など、大学の外で経験を積む機会が多いのも魅力ですね。

現在取り組んでいる研究について教えてください。

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深潟研究室では、主に流体力学のシミュレーション研究を行っています。空気や水の流れをコンピューター上で仮想的に再現・可視化して、目に見えない流れの構造を解析しています。今はダブルディグリープラグラム【※】の留学先であるKTH(スウェーデン王立工科大学)のBagheri教授との共同研究に向けて、準備を進めています。壁面変形と2相流を組み合わせ、より効果的に摩擦抵抗を下げる研究です。
例えば、石油パイプラインは表面の抵抗が大きく、その抵抗を低減するためにサラサラな液体を膜として張るということが実際に行われています。私たちの研究は、シミュレーションを通じて、より効率的な手法を模索するというものです。

【※】ダブルディグリープログラム…本校と協定校の合意のもとで準備された一連のカリキュラムを修了すると、両校から同時に学位を取得できる仕組みのこと。いずれも慶應義塾大学大学院理工学研究科から修士(工学または理学)の学位が、先方からは工学修士相当の学位がそれぞれ取得できます。

なぜダブルディグリーという形を選んだのですか?

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実は学部生の頃に、KTHの交換留学に応募したのですが、残念ながら落選してしまいました。ただそれで諦めがつくどころか、調べれば調べるほど「どうしてもKTHに行きたい!」という気持ちが強くなりました。
他の可能性を模索しているうちに、大学院にダブルディグリー制度があることを知り、再度挑戦しようと決意しました。両親からも「留学をするならば学位を取ってきた方がいい」と後押しされ、せっかく現地で腰を据えて研究に打ち込むのであれば、修士学位という明確な形の目標があった方が、将来的にプラスになると考えました。

場所がないなら、作ればいい!交換留学経験が生んだ、キャンパスの新たな国際交流の形。

課外活動について教えてください。

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今一番力を入れているのは、矢上キャンパスの国際交流を促進する学生団体『KiNETiC(キネティック)』【※】の活動です。

学部3年の秋学期に、韓国の梨花女子大学に交換留学したことがきっかけで立ち上げました。周囲は欧州からの留学生が大半だったこともあり、交流を求めて留学生支援団体「Peace Buddy」に参加しました。そこで得られたのは、国籍も専門も違う友人たちとの繋がりでした。

私自身の留学体験から、矢上キャンパスの課題が鮮明に見えてきました。例えば、キャンパスを見渡してみると、留学生はたくさんいるのに、学生間での国際交流の場がほとんどない。留学生が一人で国内旅行をしていたり、留学生同士だけで過ごしていたりして、「これだけ面白い人たちがいるのに、もったいないな」と感じました。当事者である留学生に話を聞くと、「交流したくても機会や場所がないと、なかなか難しい」と。それなら私たちで作ってしまおうと、志を同じくする仲間と一緒にKiNETiCを立ち上げました。現在はYIL(イール) 【※】などで、月に一度映画鑑賞会やクイズ大会など交流イベントを開催しています。

【※】KeiDGs…DE&I を、サイエンスを基盤とした教育と研究における多様性、平等と公平、自由と捉え、創立者福澤諭吉の言葉を今の時代に合わせて読み解いたKeio Diversity, Equity, and Inclusion Goals (KeiDGs)。2039年に迎える創立100周年に向かって、常に開かれた学びと探求の場、多彩な人材が集まる出会いと融合の場を目指しています。

【※】YIL(イール)…Yagami Innovation Laboratoryは、慶應義塾大学が掲げる「未来のコモンセンスをつくる研究大学」を実現するための拠点の一つとして2025年に誕生した施設。慶應義塾大学から生み出される科学・技術の知を領域を横断して広く社会と共有し、産学連携による人材育成、社会課題解決や新産業創出を目指すオープンイノベーションの場です。

実際に活動してみて、大変だと感じることはありますか?

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一番の苦労は人集めですね。やはり、自身のメリットになることが見えないと参加はしてくれません。あとは、PRなども紙のポスターを校内に貼るといったアナログな物だけでは、なかなかリーチしにくいと感じています。地道ではあるのですが、学生課主催のイベントに参加し、留学生にも日本人学生にも声をかけ、有志を募るなどしています。少しずつ輪を広げていって、現在、団体のLINEグループは、60〜70人規模まで成長しました。
さらに難しいのが、自分が思い描くビジョンと、メンバーが取り組んでくれることとの間にある、”微妙なズレ”のコントロールです。すべてを細かく指摘して正すのは違いますし、かといって放任するわけにもいかない。団体の代表というポジションを経験して、メンバーを動かすための具体策や組織を一つにまとめることの難しさを通じて身をもって学んでいます。

最後に、今後の目標を教えてください。

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まずは1年半のKTH留学で、学位取得だけでなくいろんなことに挑戦したいと思っています。私は大学生活を通じて、多様な人々とつながることに大きな喜びを感じてきました。修士修了後はこの経験を活かして、研究者と社会一般の人たちとの架け橋となる仕事がしたいと思っています。

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