慶應義塾

遺伝子の神秘に没頭し、ディベートに触発されて法曹の道へ

公開日:2026.06.04

登場者プロフィール

  • 久代 夏実 Natsumi Kushiro

    環境情報学部 3年

    出身校:Henry J. Kaiser High School

    久代 夏実 Natsumi Kushiro

    環境情報学部 3年

    出身校:Henry J. Kaiser High School

自然豊かな文理融合のキャンパス

小学5年生の終わりから、高校卒業までの約7年間をオーストラリアとハワイで過ごしました。海外生活で視野も広がりましたが、進路を考えるにあたっては日本の大学を志望しました。平日にSFCを訪れてみたとき、自然が豊かなキャンパスの開放感が気に入りました。そしてユニークな文理融合のカリキュラムにも惹かれ、SFCに魅力を感じるようになりました。

もともと心理学や生物学などの分野に関心があり、生命の真理を知りたいと思っていました。高校時代の生物の授業やNHKのドキュメンタリー番組などを通して、遺伝子の世界にも興味を抱きました。米粒1粒の60億分の1というミクロの世界に、膨大な遺伝情報が入っている神秘。脳科学などにも関心があり、さまざまな分野に触れながら進路を見極めたいと考えてSFCに入学しました。

久代さん

生物学への興味が導いたゲノム編集の実践

入学当初から、生物や心理にまつわる授業を多く選びました。さまざまな学びを得ながら、特に分子生物学への興味が深まっていきます。基礎が学べる黒田裕樹先生の「基礎分子生物学」を受講してワクワクしたので、1年生の秋学期から黒田裕樹研究会に参加しました。その後も同じ黒田先生の「細胞レベルの生命科学による革新」を通じて、ノーベル賞研究につながるゲノム編集技術「CRISPR-Cas9」に強い関心を抱きました。

黒田研究会に入ってからは、ゲノム編集技法の研究を続けてきました。具体的には、遺伝子組換えを伴わない遺伝子編集技術の「Target-ACE」を使い、アフリカツメガエルのゲノムを編集する手法の確立です。実際に研究室でツメガエルを飼育し、合成したmRNAをツメガエルの胚へ顕微注入します。学問的な遺伝子の知識はもちろん、職人芸のような顕微注入の技術も高めていかなければなりません。

実験で扱う分子は、目に見えないほど小さな存在です。本当に実験がうまくできているのか不安になり、もどかしく感じたりすることもあります。視認できない実験結果は、数値や電気泳動のバンドの位置といった間接的な指標として現れます。そんな手法を通じて目に見えない世界が別の形となって現れ、不可視の対象を解釈していく毎日です。日常とはまったく異なるスケールの世界を覗くたび、研究ならではのロマンを感じずにいられません。

ゲノム編集の研究はとても刺激的ですが、入り口となったのは基礎的な生物学関連の授業でした。高校時代の学習レベルに関わらず、意欲さえあれば授業で知識は補強できます。自分が興味のある分野を見つけ、どんどん学びを深めて最先端の研究にまで到達できるのもSFCの魅力です。

久代さん

ディベートの面白さに出会って新しい夢へ

ゲノム編集のような専門性の高い研究を進めながら、まったく異なる分野との出会いもありました。英語ディベートのサークル活動が楽しくなって、本格的に法曹の道を志すことにしたのです。3年生の春学期からは、法律を専門とする齊藤邦史研究会にも所属しています。

ゲノム編集と法律の間にはまったく接点がなさそうですが、実はゲノム編集技術に関する課題を法的な視点から分析する研究が始まっています。

一見大きく異なる領域を組み合わせ、自分なりの問題意識が持てるのはSFCらしい学び方だと思っています。かけ離れた分野のようにも感じられますが、その接点には未知のフロンティアがあるかもしれません。必修科目が少なく柔軟に時間割を組めるSFCのカリキュラムのおかげで、研究と学外の試験勉強を両立できています。

自分にとって未知の分野でも、SFCなら「まずはやってみよう」というスタンスで自由に挑戦できます。ひとつのキャンパスに、驚くほどユニークな学びの場があふれています。自分に合っていればそのまま深められるし、違うと感じたら別の分野へと柔軟に方向転換。そして自分なりの関心で、複数の分野をつなげることもできるのです。それぞれ異なる興味分野を持った、ここでしか出会えない人たちとの交流から知的な刺激をもらえます。

新しい関心分野を追求できたのは、分野横断的な学びが可能なSFCという環境のおかげです。生命の神秘に近づきたいという意欲は今でも強く、しかし同時に卒業後の進路としては法曹の道を目指しています。まったく異なった分野ですが、両方とも本気で追求できるのがSFCの大きな魅力。すべての過程を楽しみながら、さらなる新しい発見を目指しています。