慶應義塾

アタマの中を覗いてみた|政策・メディア研究科委員長 高汐 一紀

公開日:2026.07.14

あれ?おかしいな...

ゴールデンウィークを数日後に控えたある日。授業と大学院生との研究ミーティングを終えての帰宅途中。東西線の出口を出てあと少しで自宅、というところで、身体が少しふらついていることに気づいた。冷静に自分の状態を確認すると、まっすぐに歩けていない。

春先からいろいろあったし、疲れが出たか...

他に気づいた症状もなかったこともあって、このときはまだその程度に考えていた。家に着いてとりあえず座る。動かなければ問題もない。食欲もある。持ち帰った仕事を片付けようと開いた PC の画面を見るのが若干しんどい程度。次の日もそんな感じだった。

翌日の朝。ベッドから起き上がれない。目眩がひどい。しばらく横になっていれば落ち着くけど、家の中で移動するのもつらい。「ちょっとやばいかも...」とは思った。けど、何年か前にも似たような症状を経験していた(そのときは1日まるっと寝たら回復した)こともあって、このときもまだ楽観視していた。取りいそぎ、ラボメンに連絡して、研究会を遠隔参加とさせてもらう。

さらに次の日、今度は寝汗がひどくて目が覚めた。身体がいろいろと異常を訴えてくる。立ち上がったときの目眩はさらにひどくなっている。会議と打ち合わせの隙をみて、かかりつけの病院に行ってみる。臨時休診の看板。そっか、連休前の金曜日、気持ちはわかる、うん。いつもの薬局の薬剤師さんに症状を伝えてみると、少し困った顔。目眩にチョクに効く売薬はそれほどないらしい。漢方を勧められて入手。飲めば数時間は落ち着く(気がする)。どうせ病院もやってないし、連休の間はおとなしくしていよう。そんなこんなで、今年のゴールデンウィークが飛んだ。

実は前回のおかしら日記、この状態で書いていた。救いは、意識はハッキリしていたし、座りながらの考え事や手作業には全く問題がなかったことか。ひどい頭痛もなく、書きものもハンダづけもできた。連休が明けて授業が再開される頃には、症状もだいぶん軽くなった。秘書室の皆さんにも事情を説明し、無理のない範囲でキャンパスに通うことを伝えた。電車での移動は休み休み。ホームドアのない駅はちょっと怖い。普段なら本館横のドアから入ってそのまま階段で3階まで上がるけど、さすがにキツいのでエレベータ。3階の皆さんに聞けば、まだまだ危なっかしい歩き方だったらしい。心配をおかけした。そういえば、数週間前の血液検査の結果が出ていたはず。ウェルネスに顔を出し、担当の先生にここしばらくの症状を話した。

怒られた。滅茶苦茶、怒られた。

その場で某病院の神経内科に連絡をとってもらい、診察の予約を入れていただく。翌日、授業を休講にし、打合せもキャンセルして病院へ。過去の嫌な記憶もあって、実のところ大きな病院は苦手。でも仕方ない。診察室でも、ものすごーく苦い顔をされた。ごめんなさい、反省します。

ひと通りの問診を受けてから、部屋を移動して機械に横たわりアタマを輪切りに。ベンチに座ってしばらく待つと、もう一度呼び出しがかかる。改めて診察室へ。医療用ディスプレイに映し出される「自分のアタマの中」を、先生と一緒に眺める。下から順にてっぺんに向かって。もちろん初めての体験。何か見つかりやしないかとドキドキしながらも、ものすごくハァハァする自分がいた。

幸いなことに、今回は大きな所見は見つからなかった。「小脳近くの血管に少し硬化が見られますね」と言われたくらい。経過観察でよいとのこと。目眩の原因はわからずじまいだったし、このときには症状もほぼ治まっていたのだけど、やはりほっとした。いまは症状も全くなく、生活も仕事も元どおりに戻すことができている。と同時に、これまで以上に、ストレスを溜め込まないよう気を付けるようになった。仕事柄、ストレスに晒されない状況は作りようがないけれど。しばらくは、お酒も遠慮しないとだめだろう。愚痴を聞かされる回数が増えた方々、ごめんなさい。

そうそう、今回自分のアタマの中を覗いてみて、MRI の輪切り画像から自分の脳の 3D モデルを起こし、プリントして持ち歩いていた学生がいたことを思い出した。3D プリンタがキャンパスに導入されてすぐの頃だったかな。彼は元気だろうか。

デルタ棟のエントランスで「見てください!」と、ラボの学生に呼び止められた。指さす方を見れば、ラボのガラス壁に沿って置かれたキャビネットの上に、他のロボットと並んで手のひら大の私(首像)がいる。何かの顔写真からモデル化したのだそうだ。プリント精度もよく、綺麗に着色もされていて、実によくできている。

「肖像権って...」などと野暮なことは言うまい。「データもらってくるから、アタマの中も覗けるギミックにしてよ」と頼んだ。

P.S.

つい先日も、某学会の理事会に出席した折、同席されていた同年代の方々からも、それはもうこっぴどく叱られました。皆さま、少しでも身体の調子がおかしいなと思ったら、すぐに病院で診断を受けましょう。アタマの病気が疑われる症状の場合は、特に。年齢に関係なく。

もうひとりのわたし