登場者プロフィール
主将 今津慶介君 総合政策学部4年
主将 今津慶介君 総合政策学部4年
投手 渡辺和大君 商学部4年
投手 渡辺和大君 商学部4年
東京六大学野球2026春季リーグ戦を制し、第75回全日本大学野球選手権記念大会では準優勝。2026年シーズン前半に、大きな成果を挙げた慶應義塾体育会野球部。
チームを率いるのは主将で内野手の今津慶介君。自ら先頭に立って声を出し、行動でチームを引っ張る。
一方、投手陣の柱として躍動するのが、左腕エースの渡辺和大君。制球力と再現性を追求し、一球の重要性を胸にマウンドに立つ。
2026シーズン、春の成果をどう捉え、後半に何を目指すのか。そして、大学野球の先に見据えるものとは――。
(2026年8月20日取材)
-今シーズンのチームをどのように変えていこうと考えていましたか。
主将になったときから、「自分がチームを優勝させる」という思いがありました。僕たちは3季連続5位という苦しい状況からのスタートだったので、チームを変えなければならないと考えていました。いろいろな部分を変えていこうと思い、特に重視したのが、練習での集中力です。一球、ワンプレーに対する執念や集中力を、チーム全体で変えていこうと努めてきました。
具体的な技術やシステムなどについては専門の学生コーチや監督たちに任せて、自分は背中で引っ張ることを意識しました。言葉で鼓舞することもありますが、細かく指示するより、自分が先頭に立って声を出し、自分の行動を見てもらう。そういう形でチームを引っ張ってきました。
-今津君から見たエース渡辺君の今シーズンの活躍について教えてください。
春の2カ月間のキャンプ中から、彼の覚悟、4年生として最後の春秋の大会に懸ける思いも感じていて、その思いがピッチングに表れたと思います。
-主将としての今津君の印象を教えてください。
今津の一言一言はチームに大きな影響力があって、彼の気迫のあるプレーにも豪快さが出ていて、それがチーム全体に良い流れをもたらしています。今では今津以外にキャプテンは考えられなくて、キャプテンとして申し分ない器だと思っています。
-春のリーグ戦優勝、全日本大学野球選手権準優勝という結果をどう振り返りますか。
慶應が代々受け継いできた素晴らしい伝統を残しながら、新しいことにもチャレンジできました。それをチームに取り込めたことが、春の成果につながったと考えています。
ただ、当初の目標は、リーグ戦、全日本を含めて「4つすべてを制覇する」ことでした。その意味では、全日本で準優勝に終わった悔しさは大きいです。だからこそ、秋は絶対に落とせないという思いがあります。
今シーズンは打線の得点力が高かったので、投手としても「1点取られてもいい」という気持ちで投げることができました。プレッシャーを感じずにマウンドに立てたことは大きかったと思います。
昨年は3年生以下が試合に出る機会が多かったので、その経験が今シーズンのスタメンにも生きていると感じています。チーム全体が成長できたシーズンだと思います。
-春から秋に向けて、チームの課題は何でしょうか。
春にリーグ戦で優勝し、全日本でも準優勝したことで、「自分たちは強い」という意識がチームに漂っているのは感じています。日本一になれなかった悔しさはある一方で「六大学リーグ戦なら勝てる」という慢心も少しあると思います。
まだ春ほど自分たちを追い込めていません。秋に向けては、技術以上に気持ちの部分が課題だと思います。春は接戦をものにして優勝できましたが、「自分たちは強い」と思い込むと、チャンスで一本が出ずに負けるチームになってしまう危険があります。
だから、もう一度「自分たちは弱い」という意識で、がむしゃらに取り組む必要があります。そうしなければ、秋は優勝どころか下位に沈む可能性もあると思っています。
春に優勝し、全日本でも準優勝したからといって、すぐに秋へ気持ちを切り替えられたわけではありません。北海道キャンプなどを通して、「春のままでは勝てない」という危機感を一人一人が持つようになりました。そこから少しずつ、もう一度チーム全体で「秋に向かって、日本一を目指そう」という流れができてきました。
全日本の決勝で関西大学に敗れた原因については、短期決戦で勝ち切るために監督からチームに示されたポイントを、翌日の練習から徹底して意識してきました。夏の約2カ月間は、その課題を重点的に練習しています。練習試合やオープン戦で成果を確認し、今の取り組みを続けるのか、さらに上積みするのかを分析して秋に臨みたいです。
-左のエースとして期待されている渡辺投手個人の取り組みを教えてください。
今シーズン、一番の取り組んだ、変えたところは投球フォームで、投げるときにゆっくり、長くを意識するようにしました。昨シーズンまでは焦って投げているような感じで、フォームが短く、ボールを長く持てていませんでした。
フォームを長くすることで、いわゆる球(たま)持ちが良くなった感覚があり、制球力も向上しました。今シーズンは変化球としてツーシームも投げるようになり、内角への球が増えたことも防御率向上に大きく寄与したと思います。
-投手として、秋にさらに高めたい部分は何でしょうか。
「ここで三振を取る」という場面で確実に投げきることです。自分の基本であるストレート、スライダー、ツーシーム、フォークの4球種すべてで、狙ったところにしっかり投げられることが目標です。無駄球や逆球、少し甘く入る球をどれだけ減らせるかを重視しています。試合では、自分の一球のミスで負けることがある。フォアボール一つ、投球ミス一つで試合の流れが変わるのが野球という競技です。だからこそ、練習でどれだけ自分を追い込めるかが重要になります。「投げられるところ」「投げたいところ」に正確に投げることを何度も繰り返して、着実に正確性と再現性を高めたいです。
-今津主将が秋に向けた自身についての課題点を教えてください。
春は守備で一定の成果を出せましたが、まだ自分の守備に十分な自信があるわけではありません。神宮球場で自信を持ってセカンドというポジションを守るための練習にも取り組んできました。秋には、さらに一段階成長した守備力を見せたいです。
打撃では、速いストレートに負けないためのアプローチを特に意識しています。一流の打者には「速い球に負けない」という共通点があると思います。まずは速いストレートに対応できる打者になることが重要です。
春のリーグ戦では、調整しきれないまま臨み、ベストパフォーマンスを出せなかった反省もあります。リーグ戦は短期決戦なので、一カードでも勝ち点を落とせば優勝を逃す可能性があり、すべてのカードでベストパフォーマンスを出せるよう、準備を徹底したいです。
-お二人とも、大学日本代表での経験がありますが、そこで得たことは何でしょうか。
大学野球の最高峰の投手たちと一緒に練習することで、自分に足りないもの、通用する部分が見えました。高いレベルを肌で感じることができたことは、大きな刺激になりました。
技術面だけでなく、野球に対する姿勢についても刺激を受けました。代表チームでは、野球への思いや考え方が違う選手たちと話すことができました。さまざまな選手と交流できたことそのものが大きな刺激になりましたね。
-将来についての希望を教えてください。
大学に入学した時点では、具体的にプロ野球選手を目指すことは考えていませんでした。1年生の頃は、とにかく無我夢中で部活動に取り組んでいました。2年生でタイトルを取ったことで、「もっと上のレベルで野球がしたい」という気持ちが強くなり、3年に上がる頃にプロを目指すことを決めました。
ただ、普段の練習で常にプロを意識しているわけではありません。まずは自分自身が上達し、チームから任せてもらえる投手になること。そして試合でしっかり勝ち、試合をつくることに集中しています。
私も将来はプロに行きたいと思っています。意識し始めたのは3年春ごろで、実際にプロ入りして活躍している選手と対戦する機会があり、球の速さや技術レベルの高さを肌で感じました。そうした素晴らしい選手ともっと対戦したいという思いが芽生えました。渡辺と同じくまずはプロ野球の世界に入ることが大きな目標。プロ入り後のポジションに特にこだわりはありません。セカンドで打てる選手には希少性があると思っているので、今はセカンドに専念し、そこでアピールし頑張ります。
-慶應義塾のユニフォームを着て戦う意味や、早慶戦への思いを教えてください。
ユニフォームには独特の重みがあります。グレーのユニフォームを着たときの緊張感や責任感は、先輩たちが長年つないできたものです。「このユニフォームに恥じないプレーをしよう」という気持ちになることが、慶應義塾の伝統の素晴らしさだと思います。伝統を守るだけでなく、一試合一試合に全力で、油断せずに臨む姿勢も慶應義塾らしさだと感じています。
早慶戦も、ほかの試合とは違う特別な思いがあります。長い歴史があり、注目度も違い、大学スポーツの中でも特別な意味を持つ試合です。入学前から早慶戦が特別であるとは聞いていましたが、実際に初めてスタンドから観戦し「これが早慶戦か!」と独特の雰囲気に衝撃を受け、感動したことを覚えています。
-最後に、慶應義塾体育会野球部を応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
秋のリーグ戦、そして神宮大会で優勝することが目標です。春に果たせなかった日本一を秋に絶対に取りたいです。そのために、もう一度「自分たちは弱い」という危機感を持って練習に取り組みます。多くの塾生、塾員の方々に応援してほしいですね。
春のシーズンを通して、応援の力の大きさを実感しました。特に早慶戦では、慶應義塾側の応援の人数や迫力が初回から違っていました。その声援を受けて、選手も頑張ることができました。
応援によって生まれる「慶應義塾としての一体感」は素晴らしいです。秋も慶應義塾でワンチームになって戦えれば、優勝に近づけると思います。まだ神宮球場に来たことがない人には、ぜひ一度足を運び、この一体感を体験してほしいです。
-本日はありがとうございました。シーズン後半も期待しています。
この記事は、『塾』AUTUMN 2026(No.332)の「Portrait」の連動企画です。