慶應義塾
Keio LIFE

# 14

ペンは剣よりも強し -新しい物語を創造する慶應生たち-

#Culture
公開日:2026.09.09

プロフィール

Pen Club

その他

小説をはじめ、短歌・詩・エッセイなど、多岐に亘る文芸作品を執筆したい人や読みたい人が集まる。70年以上続いており、過去には1991年に『背負い水』で芥川賞を受賞された荻野アンナ名誉教授が顧問を務めるなど、歴史のある文芸サークル。

慶應義塾には、文芸に青春を捧げる若者たちがいる。

夜更けまで無心で小説を書く人。31文字に気持ちを凝縮して短歌を詠む人。小説を書くわけではないけれど読むのが好きな人。

Pen Clubはそんな学生たちが集まる、大学公認団体の文芸サークルである。小説や短歌、詩、エッセイなど、ジャンルに縛られない様々な作品を創ることができる場だ。部員は総勢50名ほど。年に4回部誌を発行して、それぞれのペースで執筆して寄稿する。

昨年発行された部誌。左から春部誌、夏部誌、秋部誌。

掲載されている文章はもちろん、表紙まで自分たちで作りあげているという部誌は、発行される季節に合わせてデザインや質感が異なっていた。それぞれの部誌にテーマは設けられていない。自由なジャンル、自由なテーマ。縛りがないからこそ、各自の発想力が問われることになる。

編集を担当する学生は、投稿された作品全体を見て、自分の中で定めたテーマに沿って作品を並べているという。「最初に置く作品はやはり読者がその後を読むかどうかに関わるので、編集担当の目と腕が試されると思います」とこだわりをみせた。

2025年の秋部誌の表紙に描かれたイラストは、収録された作品の要素をそれぞれ少しずつ取り入れているそう。文庫本サイズのその表紙を開いてみると、短いながらも興味を惹かれる作品が並ぶ。

執筆はパソコン派が多いそう。Wordを縦書きに設定し、書き進めていく。

執筆は専ら個人で行う。対面の執筆会は2か月に1度ほど行われ、普段はDiscordなどのコミュニケーションツールを使って交流をする。それにも関わらず、どうしてサークルに所属して文章を書くのだろうか?

部員のひとりは、小説を書くのが好きであることや短歌を詠むのが好きだということを、友人に伝えるのには抵抗があると話す。そのうえで、Pen Clubに入会してから「自分の作品を気軽に読んでもらい、真剣な感想をもらえるようになったのが嬉しい」と言う。

部誌を発行する前には、寄稿者たちがお互いの作品を校閲する期間がある。その際に、文法的な間違いのみならず、全体の構成や細かい表現についてのアドバイス、そしてその作品の感想をもらえるのだそうだ。それが創作の原動力になっていることも多いという。

執筆会の様子。よりよい表現を模索し、和やかな雰囲気。

「交流してお互いの作品を鑑賞することは、自分の文芸創作活動にとっていい刺激になる」と話す学生がいる一方で、「自分がどのくらいのレベルで書けているか知りたい」という競争心に溢れた心でサークル活動に参加している人もいる。

Pen Clubに寄稿するだけではなく、文芸賞に応募したりインターネットに投稿したりしながら、さまざまな形で創作を楽しんでいる学生たち。Pen Clubのなかには自費出版で自分の作品をまとめ、本の形にする学生も複数人在籍しているという。

「様々なジャンルの作品を考えながら、好きなタイミングで好きなだけ書けるのがいいことだと思います」

Pen Clubの代表を務める2年生はそう口にする。その言葉からは、文芸に緩やかに楽しんで向き合おうとする姿勢が伝わってきた。その自由さが、多様なジャンルにわたる個性豊かな作品を生み出しているのだろう。

SNSの台頭などにより短い文章や映像を見ることが増えて、本を手に取る機会が減ってしまった人も少なくないだろう。そんな世の中で、互いの言葉に刺激を受けながら、自分だけではたどり着けなかった表現を模索していくのがPen Clubだ。そこには、文芸を通じて緩やかにつながる学生たちの日常が垣間見えた。

※本記事は2026年時点の情報に基づき作成されたものです。

取材・撮影

R.H

第二外国語はイタリア語と中国語。言葉と音楽が好きです。最近の悩みは、イタリア語選択なのに巻き舌が未だにできないことです。


Keio LIFE TOP