執筆者プロフィール
高久 玲音(たかく れお)
一橋大学大学院経済学研究科教授商学部 卒業商学研究科 卒業2007商、09商修、12商博
高久 玲音(たかく れお)
一橋大学大学院経済学研究科教授商学部 卒業商学研究科 卒業2007商、09商修、12商博
この本は2000年以降の日本の医療政策を振り返りながら、医療崩壊と言われたコロナ禍の医療提供体制の解析も提示し、包括的な改革の方向性を示したものです。
執筆してみようと思ったのは、私自身が医療現場で診療にあたる先生方と比較的近い視座で研究を続ける中で、なかなか医療政策の全体像を示すようなまとまった著作が見当たらなかったからです。現場の先生方はそれぞれに「望ましい医療提供体制」についてご意見をお持ちですが、その一方で医療現場は極めて多様です。全体として何が重要なポイントなのかを理解するのは困難です。
そこで「外からの視点」や、「歴史として俯瞰する視点」が重要になります。私が専門にしているデータによる政策効果の推定(因果推論)は、まさに過去の検証に特化した学問体系になっており、地道な検証が社会的に望まれている際にはとても役に立つツールです。
振り返って、コロナ禍において、国際的に重症者数は格段に少ない中で「医療崩壊」とも呼ばれた状況について、誰か有効な振り返り(「あの時は特別だった」といったその場しのぎの解釈を排した頑健な解析)を提示しているのでしょうか? 悲しいことに、全く検証は行われていません。そこで、都道府県に対して病院のコロナ対応を明らかにすべく情報公開請求まで行いました。
コロナ禍の実態解明以外にも、本書では患者の自己負担をどの程度求めるべきなのか、特定検診などを含めた健康管理施策をどうすべきか、医師のマンパワー政策をどうすべきか、など多岐にわたる論点を最先端のエビデンスを紹介しながらまとめています。
少しキャッチーな論点として、本書では医学部の高偏差値化についても論じました。日々の診療に高度な数学は必要ありません。物理学など全く必要ありません。全ての医学部が東大理三のように難化する中で、他分野の高度理系人材が枯渇する危険性を直視しなければなりません。そこで本書では、医学部入試を現在の学力偏重から「くじ引き」に改めることについても提案しています。ご興味あれば、手に取ってみてください。
『医療崩壊の経済学──現代日本医療制度の再検討』
高久 玲音(たかく れお)
慶應義塾大学出版会 344頁 3,300円〈税込〉
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。