慶應義塾

『AIの倫理──人間との信頼関係を創れるか』

公開日:2026.04.20

執筆者プロフィール

  • 栗原 聡(編著)(くりはら さとし)

    理工学部 教授

    栗原 聡(編著)(くりはら さとし)

    理工学部 教授

今や世界のあらゆる話題においてAIが引き合いに出されるようになった。ビジネスにおいてはAI活用が勝敗を分けると言われ、日本においても国の重要政策の1つとなっている。それはAIが人の高度な思考のサポートにおいて、人の能力を上回ったことを意味する。

そして、このAIの進展は人のAI依存という新たな問題を生み出すこととなった。人がAIに過度に依存することでの自身の思考力の低下を意味するからである。とくに将来の日本を担う若年層におけるAI依存への懸念が昨年から増している。

積極的なAI活用というアクセルに対して、教育においては適切なブレーキが必要であるという議論は日本では聞かれない。そもそも、この1、2年における政治での目紛しい動きにおいて、教育の重要性を語った政治家を見たことがない。教育への重要性は認識しているのであろうが、それでは票が獲れないからなのか? また、日本の国際的なイノベーション力は低下する一方であるとされるが、イノベーションを起こすような基礎研究は長期的視野に立つ必要がある。日本という国が直近の利益のみを追求するようになってしまっているように感じてならない。

AIという高度な思考ができる技術は当然であるが安全保障においても重要であり、LAWS(自律型致死兵器システム)はウクライナ侵攻が起きる前は国連においても重要政策として利活用を禁止する動きがあった。しかし、侵攻後において実際に使用されてしまい、その圧倒的なメリットを世界が目の当たりにしてから、今やAI搭載ドローンの開発に拍車がかかっている状況である。

このように、AIが人や社会に与えるメリット・デメリットは多岐に亘り、それらを包含的に整理することはAIの研究開発に関わる人々だけでなく、AIを利用する人々にとっても有益であろうということが本書を編纂する動機となった。12名の研究者の専門や背景は様々であり、各章1万字程度と簡潔にまとめられた、AIと人・社会のあるべき関係についての問題提起書であり、出発点にすぎない。是非読んでいただき、自身の考えを付け加えることで本書を完結させていただきたい。

『AIの倫理──人間との信頼関係を創れるか』
栗原 聡(編著)(くりはら さとし)
角川新書 272頁、1,078円〈税込〉

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。