慶應義塾

【特集:日本の住環境、再考】座談会:人生100年時代に健康に過ごせる住まいとは

登場者プロフィール

  • 鈴木 昌(すずき まさる)

    その他 : 東京歯科大学市川総合病院救急科教授医学部 卒業

    塾員(1992医)。慶應義塾大学医学部救急医学教室講師等を経て、2017年より現職。博士(医学)。専門は救急医学。「住環境が脳・循環器・呼吸器・運動器に及ぼす影響実測と疾病・介護予防便益評価」共同研究。

    鈴木 昌(すずき まさる)

    その他 : 東京歯科大学市川総合病院救急科教授医学部 卒業

    塾員(1992医)。慶應義塾大学医学部救急医学教室講師等を経て、2017年より現職。博士(医学)。専門は救急医学。「住環境が脳・循環器・呼吸器・運動器に及ぼす影響実測と疾病・介護予防便益評価」共同研究。

  • 川久保 俊(かわくぼ しゅん)

    その他 : 法政大学デザイン工学部建築学科教授理工学部 卒業理工学研究科 卒業

    塾員(2008理工、13理工博)。法政大学デザイン工学部建築学科准教授等を経て、2021年より現職。専門は建築・都市のサステナビリティアセスメント。博士(工学)。著書に『私たちのまちにとってのSDGs』(共著)等。

    川久保 俊(かわくぼ しゅん)

    その他 : 法政大学デザイン工学部建築学科教授理工学部 卒業理工学研究科 卒業

    塾員(2008理工、13理工博)。法政大学デザイン工学部建築学科准教授等を経て、2021年より現職。専門は建築・都市のサステナビリティアセスメント。博士(工学)。著書に『私たちのまちにとってのSDGs』(共著)等。

  • 伊藤 真紀(いとう まき)

    その他 : 積水ハウス株式会社ESG経営推進本部・渉外部主任理工学部 卒業

    塾員(2018理工博)2006年大阪市立大学生活科学部居住環境学科卒業。08年九州大学大学院総合理工学府環境エネルギー工学専攻修了後、積水ハウス入社。研究企画、技術渉外に従事、20年より現職。一級建築士。

    伊藤 真紀(いとう まき)

    その他 : 積水ハウス株式会社ESG経営推進本部・渉外部主任理工学部 卒業

    塾員(2018理工博)2006年大阪市立大学生活科学部居住環境学科卒業。08年九州大学大学院総合理工学府環境エネルギー工学専攻修了後、積水ハウス入社。研究企画、技術渉外に従事、20年より現職。一級建築士。

  • 永田 智子(ながた さとこ)

    看護医療学部 教授

    2000年東京大学大学院医学系研究科単位取得退学。博士(保健学)。東京大学大学院医学系研究科准教授を経て、17年より現職。専門は在宅看護学。日本在宅ケア学会理事。

    永田 智子(ながた さとこ)

    看護医療学部 教授

    2000年東京大学大学院医学系研究科単位取得退学。博士(保健学)。東京大学大学院医学系研究科准教授を経て、17年より現職。専門は在宅看護学。日本在宅ケア学会理事。

  • 伊香賀 俊治(司会)(いかが としはる)

    理工学部 システムデザイン工学科教授

    早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了。日建設計、東京大学助教授を経て2006年より現職。専門は建築・都市環境工学。博士(工学)。日本建築学会副会長。著書に『すこやかに住まうすこやかにいきる』(共著)等。

    伊香賀 俊治(司会)(いかが としはる)

    理工学部 システムデザイン工学科教授

    早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了。日建設計、東京大学助教授を経て2006年より現職。専門は建築・都市環境工学。博士(工学)。日本建築学会副会長。著書に『すこやかに住まうすこやかにいきる』(共著)等。

2021/12/06

健康と住まい

伊香賀

今日は主に「健康・長寿」という観点から、日本の住環境を見直そうということで皆様と討議していきたいと思います。

はじめに私から現状をお話ししておきたいと思います。先日、「在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク」の全国大会があり、そこで「住まいと住まい方の見直しによる疾病・介護予防」というテーマで話しました。しかし、現状、根拠になるデータが日本では乏しい状況です。

データをしっかり集め、医学論文になるレベルで積み重ねをしていかないと、日本の健康政策に「住まい」という要素が入っていかないと思っています。

特に今、高齢者に対しては地域包括ケアでしっかり支えようとしているわけです。そのいわば土台となる植木鉢の部分が「住まいと住まい方」ですが、その大事な植木鉢の部分にどうも「ひび」が入っているのが日本の現状と思います。

日本の家がなぜ寒いか。常に引き合いに出されるのが『徒然草』の「家のつくりようは夏を旨とすべし。冬は、いかなる所にも住まる」の一節です。鎌倉時代の話ですが、冬は寒くてもどうにでもなると言う。現在に至っても、建築家や住宅を供給する側がこの言葉を錦の御旗として掲げ、断熱なんかしなくていい、という主張の根拠として引用されるわけです。

しかし、この徒然草は人生50年の時代に書かれたもので、京都や鎌倉などの温暖地を想定していて、東北や北海道は念頭になかった。でもそれが広く流布しているという問題があるんですね。

一方、イギリスは現在、住環境が健康政策にしっかり位置付けられています。それはナイチンゲールが160年も前に『看護覚え書き』という本の中で住環境に対して深い理解を示し、それが根付いているのではないかと思います。

温度の基準まで決められ、適切な暖房環境は18℃以上で、家が寒いといろいろな病気になると国民に伝えています。実は日本以外の先進国は健康政策に住環境がきちんと位置付けられていて、それを踏まえてWHOが3年前にガイドラインを出し「冬季室温18℃以上」を強い勧告という形で出しています。しかし、日本はまだこれを受け入れる準備ができていない。

今、ちょうど「健康日本21」の第3次の改定作業が始まったところです。この見直しの中で、住環境が健康上の課題であることを認識していただける状況にはなりましたが、最終的に反映されるかどうかはわかりません。

このような状況なのですが、まず、それぞれのご専門の立場から、日本の住宅について現状の問題点をどうお感じになられているか、伺いたいと思います。救急医学の鈴木さんからいかがでしょうか。

鈴木

そもそも救急医学の中で「住宅」というのは課題としてほとんど出てきません。しかし、よく考えてみれば、われわれは1日の中で8時間なり10時間なりを自宅で過ごしているわけですから、そこでの生活環境が重要なのは言うまでもないことです。

いつも申し上げるのですが、救急医学というのは「なれの果て」みたいなところがあります。病気になり、ちょっと調子が悪いから近くの病院に行くのではなく、ひどくなって緊急を要する状態になってしまったというイメージかと思います。

そういった方はどこから運ばれてくるか。もちろん外出先や職場からも運ばれてきますが、ご自宅からもたくさん運ばれてくる。最近の日本では、いわゆるセーフティネットとしての救急の役割が非常に重くなっています。どういうことかと言いますと、いわゆる弱者と呼ばれるような方、あるいは生活困窮者の方が普通に病院にかかれないような状況が増えてきたという背景があります。

そういう方々の生活環境、住環境はかなりひどくなっている。ほとんど健康に関心を持たず、すさんだ生活をされている方も非常に多い。われわれが人生の中で多くの時間を過ごす住居の環境を考えることは非常に大切なのです。

高血圧や心・血管疾患、救急では入浴中の死亡ということもあります。それから、家の中で転倒してケガをしてしまうことも多くなっている。また、気候変動によって夏場の高温などが注目されていますが、生活環境の中で気象、気温の影響をどのように受けるかということは、もっとわれわれも考えなければいけないと思っています。

さらに現在、新型コロナが流行、収束を繰り返していますが、実は、私は、暖房あるいは冷房を使わなくてはいけない環境になった時に波が来ているのではないかと疑っています。

例えば第1波の初めの時に北海道がとても感染者が多かった。北海道は寒い地域ですから、密閉して部屋を暖める。すると、密閉状態で換気をしないとやはり感染してしまう可能性が高いのではないかと思います。

今般のいわゆる第5波も8月の中旬、急に涼しくなったあたりから減ってきたという印象があります。換気すれば冷暖房の効率が悪くなりますが、そういったことまで考えていかなくてはいけない時代に入っているのだと痛感しているところです。

在宅看護と住宅

伊香賀

永田さん、在宅看護の立場からお話をお願いします。

永田

私たち在宅看護は例えば救急から帰ってきた、あるいは救急にかかるおそれがある患者さんたちの居場所である自宅に、なるべく長く住み続けられるように支援をする立場ということになります。

高齢者、障害のある方はいろいろな家に住み、その地域の方々とのつながりを保ちながら暮らしていらっしゃいます。ですから、どんな環境であってもなるべく今のお住まいに住み続けていただきたいのですが、エレベーターのない5階建ての集合住宅に、障害をお持ちの方が住み続けたいというケースに直面することもあります。

また、言われたようにお家の中が、非常に乱雑と言いますか、マスコミ的な用語ですと、いわゆる「ゴミ屋敷」と言われるようなお家もあります。そのような状態でもその環境が自分はよいと言って住んでおられる。本人にとっては決してゴミではなく全て自分の大事な思い出や宝物だからです。

私たちはそういった様々な環境にある方々の希望をなるべく適えつつ、その方たちが健康を保ち、疾患などが悪化しないように日々看護を提供していかなければなりません。転倒しないように片づけてしまうことは簡単ですが、家にある物はその方たちの財産です。それを勝手に「危ないから」と片づけてしまったら、「もう来なくていいです」と接点が断たれてしまう。

そうならないように信頼関係を築き、「お風呂に入る時にここを少し片づけると転びにくくなりますね」と了解を得ながら少しずつ環境を整えていくような辛抱強いことをやっています。これは問題点というより現状ですね。

気候のことで言えば、確かに冬に室内温度が非常に低いことで循環器疾患などが悪くなることもあるのですが、現場でよく聞かれるのは夏場のエアコンについてです。

「夏を旨とすべし」というほうも、実はまだまだままならない。どんどん高温多湿になり、昔と違う密閉された集合住宅や密集した住宅なのに、エアコンを使うことを拒む高齢者の方がたくさんいらっしゃいます。

そこも先ほどと同じで、いかに少しでもエアコンを使っていただくか、信頼関係をつくりながら、少しでも室温が快適になるようトライします。

また住宅の問題点とはちょっと違うかもしれませんが、人が出入りをしてケアを導入しないと生活ができなくなってくる人たちが増えている一方、オートロックや防犯性が非常に進んだ住宅が増えています。それはとても大事なことですが、外部の者がその家に入ろうとしてもそれができないこともあります。

鍵を預けていただける関係にまでなればいいのですが、そこまでいかない場合、その家にアプローチすることができなくなる。場合によっては早くにその方のところに行かなければいけないのに、それが立ちふさがるカベになったりすることもあります。

断熱性能の改良

伊香賀

医療関係のお二人から現状についてお話しいただきました。次に住宅を供給されている企業の代表として、伊藤さんからお話をいただければと思います。

伊藤

私が感じている住宅の問題点は、やはり断熱性能の低さです。当社では政府の動きに合わせて断熱基準を上げていきましたが、築20年以上の住宅については現行基準を満たしていない住宅も多くあります。

そういった住宅については、「断熱改修をしましょう」というリフォームの提案に注力しています。築20年以上経ちますと、お子さんが巣立ち、高齢のご夫婦のみの世帯になっている場合も多い。ですから、2階建ての家の全てを改修するというより、今使っている範囲から始めましょうと、LDKを中心に断熱改修することを勧めています。

室内の温度差も気になるところです。例えば廊下や洗面所といった冷えやすいところには小型の空調機を入れ、まず居住範囲の温度を整えましょうという提案をしています。費用との関係もありますが、住まいながらリフォームできる点もポイントで、受注が増えています。

また、新築では、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)を推進しています。ZEHとは、断熱性能を大幅に高めた上で、省エネ設備を導入し、さらに太陽光発電、燃料電池といった発電設備も揃え、年間のエネルギー支出ゼロを目指す住宅です。昨年度は当社販売の戸建住宅の91%がZEHでした。

新築時にそういった性能を備えることで、導入コストを抑えられるメリットもあります。省エネ性に加え快適性も向上します。例えば、窓は一般的に最も熱が逃げやすい部分になりますが、窓の断熱性能を十分高めていれば、大きな窓を作っても寒くなく、自然とつながる開放的な空間を作ることが可能です。このように、新築でもリフォームでも居住環境を快適にしながら省エネ性能を整えていくのが現状の当社の取り組みです。

先ほど換気のお話を鈴木先生からいただきましたが、新型コロナの広がりを受け、当社も昨年、「スマートイクス」という商品を発売しました。これは、熱交換型の換気設備と天井付の空気清浄機で、室温を維持しながら換気・空気清浄を行うシステムです。設計時に空気の流れをシミュレーションし、室内の空気の状態を確認しながらの提案も行っています。

安全から健康へ

伊香賀

川久保さんは、大企業のハウスメーカーだけではなく、住宅を建てる上で大きな役割を担う、各地域の小さな工務店の事情についてもよくご存知ですね。

川久保

建築物というのは、われわれにとっては重要な生活基盤であり社会インフラです。特に現代人は人生の90%を屋内で過ごすと言われており、とりわけ住宅はわれわれの安全を守り、休息する場も提供してくれます。また子孫を育む場でもあるわけで、そこを大事にするのは当然のことと思います。加えて最近は、在宅勤務で働く場にもなっている。多様な目的が求められ、本当に様々な観点から住宅のあり方を考えなければいけないと思います。

少しわが国の住宅政策を振り返ってみると、1945年の終戦の時は焼け野原で、とにかく住宅が足りなかった。住宅難の時代でしたが、とにかくハウスメーカーや全国の工務店などが懸命に住宅を供給してくださったお蔭で、量的にはだんだん充足してきます。それが1970年ぐらいまでです。

次に量から質への転換があり、2000年ぐらいまでだんだん質を上げていきましょうという方向になった。途中でシックハウスも大きな社会問題になりましたが、2000年代中頃ぐらいから良質なストック形成という形で、だんだんと今の健康住宅のところにもつながる流れができてきました。

住宅不足で大変だった状態からすると、今のように住宅がとりあえず一通り整ったことは喜ばしいことですが、やはり問題点としてよく言われるのが、住宅の寿命が短いこと。他国と比較するとスクラップ・アンド・ビルドの期間が頻繁であるという点です。

その対策として長期優良住宅制度などが提案されていますが、他国と比較するとまだまだ住宅の長寿命化は必要です。加えて資源循環という観点、脱炭素といった問題解決にもつなげていかないといけないと思います。

つまり、社会資産としての住宅をどうするかということも検討せねばなりませんし、環境性能等も上げていかないといけない。しかし、住宅は社会資産であると同時に個々人の私有財産でもあるため強制的に手を加えることもできませんし、どのように市場全体の住宅ストックの質をあげていくか。このあたりが非常に難しいところです。

最近は至るところでSDGsが登場しますが、その目標12に「つくる責任つかう責任」というものがあります。

これは建築関係者にとって一番重要なことで、どのように質の高いものをつくり、それを長期的に使っていくのかが問われています。さらに、最近はこれに加えて、業界では「しまう責任」も重要だという指摘がされています。つまり、使い終わった後、空き家をそのまま放置せず、解体まできちんと責任をもって行うということです。

現在、住宅をめぐる業界では改めてレジリエンスの視点が重視されています。特に3・11以降は安全・安心な家づくりというところの強化が謳われています。

1961年に「居住環境に関する人間の基本生活欲求を満たす4つの条件」というものがWHOから出ています。まずは「安全」。住宅はとにかく人の命を預かる場所なので安全が大切と。その次に「健康」。これに「利便性」、「快適性」が続きます。

わが国の住宅は、一般的には質が高いと思われていますが、耐震性能であったり、健康に関わる性能であったり、WHOが言う4条件の基本のところを改めてもう一度見直さないといけないのではないかと思っています。

「極端な状況に陥らない」ために

伊香賀

それでは次にどのような住宅が健康にいいのかを考えていきたいと思います。鈴木さん、例えば入浴事故に遭わないような住宅についていかがでしょうか。

鈴木

どのような住宅が健康によいのかと言われると、救急医の立場からすれば、「極端な状況に陥らない」ということがまず、健康を守る上では必須の条件です。

例えば夏期に室温が40℃ぐらいになってしまう。逆に冬期にはいつも2、3℃まで下がる。そういった環境でずっと暮らすことが健康的でないというのは容易に想像がつきます。

私たちは環境障害と言っていますが、夏期の熱中症、熱射病、それから冬期の低体温症になるのはご高齢の方が非常に多く、しかも、そういった環境の中で暮らしていることが多いのです。

お風呂に関して言えば、私たちが考えている入浴事故の最も有力な原因は、高温のお湯につかることによって起こる、いわゆる熱中症です。熱中症というのは環境温度に依りますので、それを予防するためには、体の周りのお湯から受ける熱量を減らすことです。

要するに、湯温を下げるか、入っている時間を短くするということになります。しかし真冬に38℃のお風呂に入れますかと考えると、環境温度は気象条件に依存することになる。すると、気象条件に大きくとらわれない住宅はどういうものかといった方向性が、お風呂の事故の予防にはいいということになります。なので最初に申し上げた通り、極端に寒い、極端に暑いという、なるべく極端な状況にならないことが重要だと思います。

一方、では室内が年中24℃で一定なことが本当にいいのか。人間にはある程度の温度の振れというのは必要です。体に対する軽度のストレスは、それに対して体が対応しようとする力を作り出すはずで、それをなくしてしまうのも逆に体にとってはよくない。ですから、変動する余地の一定の幅というのを決めてあげることが、必要になるのではないかと思います。

永田

「健康にいい」という時の「健康」という言葉も、なかなか深いものがあります。WHOでは、「身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態」が健康だと言われていますが、おっしゃったように身体的な健康は極端な状況に陥らないことが最低限の基本であり、そこをきちんと保つことは本当に重要なことです。

住居と健康ということでいうと、転倒予防とか移動のしやすさというのも重要な要素だとは思いますが、このあたりはなかなか一概には言えません。すべてバリアフリーにして平坦で障害物がない住宅がベストかと言うと決してそうではなくて、お話があったように、何らかのストレスがあるほうがかえってよい場合もあります。

階段の昇り降りのあるほうが日常の運動量が担保できますし、細かい段差は転倒につながりやすいけれど、玄関の上がりかまちは段差があるほうが足をしっかり上げるので、それを日々行うことで身体の可動域が保たれるということもあると思います。

ですから運動量を保ち、身体の可動性を担保するという意味では、一般的にはある程度のストレスがかかるような状態があるほうが、その家に適応して運動能力を保てることにつながります。

社会的、精神的な健康というところも、看護の立場からはどうしても考えるところです。閉じこもりは人々の健康寿命に影響すると言われ、社会的な交流や外出の頻度を保つことも非常に重要だと思います。家にいて快適ということに加えて外に出やすい環境もちゃんと担保することも健康にとっては重要です。

一方で、健康の定義の「完全に良好」から外れた人は健康でないのかという議論もあります。それぞれの人がそれぞれの身体状況や置かれた環境の中で、自分が持っている能力、自分のやりたいことが実現できるのであれば、例えば障害がある方でもある意味、健康だと考えることもできるわけです。

ですから、老化や障害がある状態になっても、その方の能力が発揮できる状態を保つことが必要です。そう考えると、人が1つの家にずっと住み続けるのであれば、やはり家も変わっていく必要があるのだと思います。あるいはその方の状況に応じて、適した場所に移動するということも必要かもしれません。

コミュニティとのかかわり

伊香賀

伊藤さんはいかがですか。ICTも組み合わせながら、様々な住宅をすでに提案し、供給していると思いますが。

伊藤

住宅はやはり「安心・安全であること」がベースにあると思っています。家が命を守ってくれるシェルターであることが確保された上で、健康、快適であるということだと思います。

永田先生から交流のお話が出ましたが、住宅の環境を整えるとともに、やはりコミュニティ、住んでいるまちを整えていくことも重要だと思います。私が慶應の博士課程で伊香賀先生の研究室に在籍していた時に、当社の分譲地を2つ、調査していただき、CASBEEという評価ツールで住まいとまちの健康度をチェックしました。

1990年前後に開発が始まった大型分譲地で、3000~4000人ぐらいが居住しているまちですが、住民活動が活発で自治会がしっかりしている、近隣の方とのコミュニケーションがとれていて見守りができていることから、「まちの健康度が非常に高い」という調査結果をいただくことができました。まちのコミュニティ形成をサポートしていくこともハウスメーカーの役割だと思っています。

住み替えという観点のまちづくりも行っています。東京中野にある「江古田の杜」では、同じ開発エリア内に分譲マンションと賃貸住宅、そしてサービス付き高齢者住宅、特別養護老人ホーム等を建設し、自分のライフステージが変わっていくとともに、そのまちの中で住み替えができるという仕組みをつくっています。

住まいとまちをうまく組み合わせて居住者の健康度を上げていければと思っています。

伊香賀

積水ハウスというと、高級一戸建て住宅の供給会社というイメージがありますが、最近、質の高い低層賃貸住宅もやられていますね。

賃貸住宅というのは、劣悪で、ともかく安く造り、家賃も抑えて空室をつくらないようにするところが歴史的に多い。そこに例えば子育て世代の若い方が入居すると、お子さんも病気になってしまう。

高齢の方が状態の悪い賃貸住宅に住み続けざるを得ない状態もあり、「賃貸住宅もなんとかしないといけない」という話もありますね。

伊藤

その通りです。当社は賃貸住宅も手掛けていますが、賃貸住宅は安く造るために、断熱性能等にはあまりコストをかけたくないというオーナーさんもいらっしゃいます。しかし当社では、断熱性能を高めて、先ほど申し上げたZEHにも取り組み、付加価値を高めることで長く選ばれる賃貸をご提案しています。入居者の方には健康や快適性の向上、光熱費抑制等のメリットがあり、オーナーさんにとっても高い家賃水準を維持でき、安定した賃貸経営が可能になるというメリットがあります。

また、築年数の古い住宅は、アパートも非常に寒いです。私自身、冬の朝起きると白い息が出るぐらいのアパートに住んだことがあります。そういう住宅についても断熱性能を高めていくリフォーム提案を行っています。築年数の古いものについては性能を上げる。新築についてはZEH基準のものを提供する。戸建住宅に限らず、住宅全般の性能を上げていくことに注力をしています。

縁側空間の再発見

川久保

住宅の環境を整えることは様々な面で極めて重要です。例えば環境を整えることを通して犯罪を予防できるという考え方があります。「Crime Prevention Through Environmental Design(CPTED)」と言うのですが、私は講義の中でCの部分をHに変えて、学生たちに「Health Promotion Through Environmental Design」という考え方を伝えています。

予防医学の世界に、1次予防、2次予防、3次予防という分類がありますが、こうした個々人の健康維持に向けた努力に加えて環境整備によって健康を促進し、疾病等を防ぐというゼロ次予防という考えです。個々人の健康を保つためにも、身の回りの環境を整えておくことが重要かと思います。

先ほど永田先生がWHOの身体的、精神的、社会的健康というお話をされましたが、身体的というところで言えば、まず、物理的障害を除去して転倒、転落を未然に防止しないといけません。高齢者の方やお子さんなど、注意力があまり高くない方が最初に転倒被害に遭いやすいので、そういう方々にとって安全な環境をつくることが重要です。

部屋内の空気が汚染されていれば呼吸系疾患になりますし、暑ければ熱中症、寒ければヒートショックになりますが、身体的な危険を予防する機会はたくさんあると思います。

精神的なところでは、最近のコロナ禍の中でうつ状態になっている方が多いと言われます。それは、ずっと家の中にいて日の光を浴びないとか、昼夜逆転した生活を送っていることも影響していると思います。

例えば東向きに寝室があって、朝起きると朝日が入ってくるような間取りにしていれば、そういったことも防げるかもしれません。積極的に窓を開放できるような形にすれば空気環境も是正できます。家族のコミュニケーションのとりやすい間取りも精神的な健康を維持できるかもしれません。

社会的な健康という点では今、人と人のつながりが少しずつ弱くなっている点が気になっています。単身世帯で都会に出てきて周りに知り合いがいないといった環境がやはり、社会的な健康を害しているようなところもあるのではないかと思います。

複数の世代が一緒にいれば様々な話もできますし、子供や高齢者の見守りもできます。そういうところを、IoTなどを使いながらどう補完できるか。現代社会にマッチした方法を模索していかなければいけないと思います。

もしかしたらそのヒントは昔の家づくりにあるかもしれません。例えば縁側空間など、社会との接点を促す空間があればご近所さんがちょっと寄ってくれることもあるかもしれませんし、環境的に見ても、寒い/暑い外と家との間のバッファー空間になってくれているかもしれません。

ずっと環境が一定のところにいるよりもちょっと温度変動を感じるような空間があると、われわれの温熱環境への適応能力も上がるのかもしれません。そういったことは私ももっとエビデンスを見つけないといけないと思いながら研究を続けています。

伊香賀

『公衆衛生』という雑誌の7月号に、「健康的な住まいが欲しい! 暮らしやすくて寿命も延びる」という特集を組んでいただけました。また今年の2月には、看護協会の機関誌の『看護』に「暖かな住まいによる健康寿命の延伸」を書かせていただき、このようなお声がかかるようになりました。

ただ一方で、在宅介護の中における住まいの問題点はほとんど知りません、とおっしゃっていた看護の関係者の方もいらっしゃる。住まいの問題はまだ一部の方にしか認識されていないのかもしれません。

要介護状態になってしまっている人に対して、手すりを付けるとか、段差を解消するような費用は介護保険で費用が出ます。しかし、家の断熱性能をよくするという話だと、自己負担で何百万もお金がかかるので、問題であることはわかっていても口にすらできない。そういうハードルもまだ残っているのではという気はします。

そういう状態に至る前の、健康な方々にしっかりメッセージを伝えて、介護状態になる前に予防するということでないと、聞く耳を持ってもらえないのでしょう。そういったことが日本の抱える課題のようにも思っています。

「さらなるよい住宅」とは?

伊香賀

次に「さらなるよい住環境にするには?」ということで討議をしていきますが、ここで慶應としての取り組みを少し紹介したいと思います。「コエボハウス」と命名している慶應型共進化住宅というものです。

これは湘南藤沢キャンパスの中にありますが、2014年に経済産業省がいろいろな大学に公募をかけて、未来に日本で普及させるべき住宅を提案し、実際に建ててみせなさいという国のプロジェクトがあり、慶應はこういう住宅を提案しました。永田さんは、こういう建物が存在していることは認識されていましたでしょうか。

永田

認識していましたが、残念ながらまだ伺ったことはないんです(笑)。

伊香賀

このプロジェクトはSFCの建築の池田靖史教授が中心メンバーで、理工学部の私や看護医療学部の先生にも関わっていただいています。また、神奈川県の黒岩知事が政策として未病プロジェクトに取り組んでいて、その実証の場の1つにも位置付けられています。

健康の維持・増進、安全な地域環境という目標を掲げ、環境負荷削減ということで、造ってから壊すまでCO2を全く出さず、プラスマイナスゼロの住宅という話で建てたものです。ただ、あくまで研究レベルのお話です。

それが今後、日本の実際の住宅にどう展開していけるかということが課題ですが、「さらなるよい住宅」ということで提案しています。適度な段差というのも、この設計コンセプトに入っていて、平屋の住宅ですが、意図的にしっかりした段差を付けています。

現在、在宅ワークや在宅学習が増えて、家の性能にますます皆が関心を持つ時代になりました。会社の経営者も、単にオフィスを立派にするだけではなく社員がきちんとした住宅に住むことが健康につながり、昼間の仕事の能率が上がって、業績につながる。健康経営の観点からも、改めて経営者の意識が変わったのではないかと思います。

それから自然災害のことも考えるべきです。大雨が降り、停電が起きて、電気がしばらく止まってしまった時に、そもそも住宅が安全で完全自立できるだけの発電能力を持っていれば自宅にとどまれるかもしれない。

これからはそういうことも含めて提案していかないといけないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木

「健康のために」と言っても、例えば生涯に2回も3回も家を建てる方はそうはいらっしゃらない。やはり一生に一度の買い物であるのは今も変わらないと思います。そうすると、20年前の断熱基準だと言われても、そうそう新しく建て替えられない。

実は一番大きな問題点は、単身世帯が非常に増えていることなのではないかと思っています。つまり、1人で暮らしていたら、建て替えようなんていう発想はたぶんなくなるのです。

暖房や冷房に関しても、特にご高齢の方は、1人だと使わない。お孫さんやお子さんなりが訪問して「ちゃんと暖房をつけろ、冷房をつけろ」と言っても、来ているときはつけるけど帰ったら、「もったいないし、私はいや」となってしまう。

そのように同居者が少なくなっていること自体が、住居を新たにしていく、あるいは新しい技術で環境を調整していくことを妨げているのだろうと思うのです。メンタルに関しても、あるいはゴミ屋敷化することに関しても、「1人しかいないから」ということもあると思います。

先ほどストレスという言い方をしましたが、ある程度の負荷というのは人間にとっては必要なものです。しかし、若い頃とは違い、体の機能が弱っていくに従い、その負荷の範囲を徐々に狭めていかなければいけない。そこで階段をバリアフリーでいけるようにするといった住居の構造の変換が求められるのです。

同時に、例えば断熱のことに関しても、将来、高齢になった時にはスムーズに変換できるとよいと思います。「窓をもう1枚増やせばこれだけ室温がよくなりますよ」といった提案です。

日本は災害も多いですし、四季があるということは寒い時も暑い時もある。それを全て制御するだけではなくて、一部は取り入れて、われわれの環境に対する適応能力を生かしつつ、適応できない部分を技術的にサポートしていくことが必要なのではないかと感じています。

「見守り」という課題

永田

先ほど伊香賀さんから、看護や医療関係者が住宅に対して冷たい、というようなご指摘をいただき、ちょっと耳が痛いような感じです。

確かに、在宅看護というのは、今ある住宅の中でなんとかするというところがあって、なかなかそこを変えていくという文化にまではなっていないかもしれません。しかし、そうは言っても、それこそ地域包括ケアシステムの真ん中に住まいや住まい方があることは、今は看護の中でも常識になっているはずです。

また、例えばWHOが提案するヘルスプロモーションという健康戦略の中にも、健康のために1人ひとりが努力するだけではなく、全体の環境自体を整えていくということがあります。これからは看護のほうからも住環境を考え、整えていくことが当たり前の時代になっていくことを期待しています。

しかし、そうは言っても、私も自分が関係している患者さんに、「断熱工事をすぐしたほうがいいですよ」とはなかなか勧められません。ですので、様々なコストがかからない方法論を開発していただく。それから、WHOの基準ですとか、断熱の基準をアピールすることで、少しずつ変えていくことが必要かと思いました。

また、単身世帯が増え、世帯人員がどんどん減っている中で、これからは「見守り」ということが重要な課題になると思っています。在宅看護も見守り役の1つを担っている側面もありますが、そこは多重的な方法でカバーしていくしかないのではないでしょうか。

人のつながりを保てるような縁側のようなまちづくりや家づくりもあると思います。最新技術を使ったICT、モニタリングやセンサーなどを取り入れ、転倒などの安全を確認するということも考えられると思います。

これはプライバシーとの関係があり、難しいところもありますが、全然動かない時にはアラートが鳴るようなシステムはすでに開発されつつあると思います。

1つの方法では全てはカバーできないと思うので、いろいろな方法で1人高齢者世帯等をカバーし、孤独死などが少しでも減るとよいと思います。

災害対応については私の立場からは、災害に強い住宅を建てていただくようぜひお願いしたいと思います。コミュニティの結束を強める1つのきっかけは防災もあると思います。マンションの自治会は集まるのが面倒なところがありますが、災害に備えるという目的があれば結構集まりやすい面もあります。

ハード面で災害に備えることもとても大切ですがソフト面の備えも重要だと思います。災害が起きた時にどのように協力できるのか。この地域や住宅の中にはどこに備蓄の物があり、避難時に助けが必要な方はどこにいるのか。そういうことを話すことがコミュニティを強化していく1つのきっかけにもなります。

アンチエイジングな住宅

伊藤

新しい住宅について、ハード面の技術はいろいろ整ってきています。

一方、そうではない住宅も多くあります。性能向上が必要と思っていても、なかなか踏み切れない、どうしたらいいかわからないという方のために、当社では今、体験館のような展示施設で実際にどう変わるのかを体験いただけるようにしています。

リフォームを行う時、工事を始めてから住宅の状態がわかることも多いと思いますが、当社の場合、建てた時から住宅の情報履歴というものを管理しています。すると、リフォームも最適な方法でご提案・工事をすることができ、ご負担も軽減できると思います。

災害や環境変化については、当社も太陽光発電や蓄電池を備え、停電時も数日間は普段通りの生活ができる住宅も用意しています。昨今、こういう住宅へのニーズが高まっています。

また、暑熱を防ぐ方法については、太陽の熱をいかに家の中に入れないか、ということも1つのポイントです。そこで縁側や庇のほか、木陰をつくる庭造りも大切です。当社では生物多様性に配慮した庭造りとして「3本は鳥のために、2本は蝶のために、日本の在来樹種を」という思いを込めて「5本の樹」計画を進めています。木陰づくりだけでなく、鳥や蝶等の生き物が訪れる豊かな住宅環境が整えられます。

単身世帯の見守りという話で言えば、お1人で家の中で急に倒れてしまい、誰にも気づかれない、といったことをいかに防ぐかという観点から「在宅時急性疾患早期対応ネットワーク(HED-Net)」の開発を進めています。

家の中にセンサーを埋め込み、非接触型で居住者の方の心拍数や呼吸数などのバイタルデータを取得していく。万が一、何かあった時にはオペレーターがその情報を感知して安否確認を行い、救急隊の出動が必要であれば要請する。家の玄関の鍵も遠隔で開け閉めを行い、病院に運ぶというシステムです。

川久保

わが国が超高齢社会になっている中で、熱中症被害者もそうですし、家庭での転倒や溺水など、住宅の環境要因で起きる不幸なことを少なくしていくことが必要です。そこで私はアンチエイジング住宅(抗加齢住宅)というものを提唱し、その理念の確立に向けた実証研究を進めています。

住宅そのものとそこに住まう居住者の双方がアンチエイジングになる住宅の実現を目指しています。躯体が長持ちして風水害に強く、設備の劣化にも強くあって欲しい。やはりまず、われわれの生活基盤たる住宅が長持ちすることが大事です。「人生100年時代と言われる中、後半のほうで家のほうがボロボロになるのではないか」といった不安を持たなくて済むことが大前提です。

家が長持ちし、さらにその性能がよいことで、中に住んでいる方の脳年齢や血管年齢、筋力年齢、皮膚年齢などが若々しく維持されるような家が理想です。究極の目標は、個々人が最期の時まで高いQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を実現でき、ウェルビーイング(その人にとってよい状態)を全うできること、わかりやすく言えばとにかく家族皆が幸せに暮らせる家づくりが重要ではないかと思っています。

このような問題意識を持ちながら、次世代の家とは何なのか、ということを追究し続けていくことが研究者としての責務だと思っています。

人生100年時代の住宅を考える

伊香賀

技術的なことはおそらく解決しているはずで、現状の技術で十分に健康面でも問題のない住宅ができることは間違いないです。すると、ではそれをどのように皆が受け入れるのか。それから、医療関係者や介護・看護の関係者と住宅供給者がどう連携するのか。そういう部分にまだ大きな課題があるのではないかと思っています。

多職種連携で異なる専門家が連携しないと、やはりこの先はうまくいかない。そういうことから、ようやく今、国土交通省に厚労省の健康局、老健局が加わり、日本医師会、看護協会の方、建築関係の団体も入った国による医療福祉・建築連携事業の実証プロジェクトが徐々に行われています。

でも、このプロジェクトは、在宅医療やオンライン医療にチャレンジしているお医者さんがいろいろなバイタルデータを見られるところまでは進んでいるのですが、温度とか空気の汚れといった情報が抜けています。

夏、毎日40℃にまでなる部屋で暮らしているといった情報がバイタルデータとセットで医師や介護の方がチェックできる状況になれば、もう少し連携ができるようになるのではないか。皆の意識、関係者の連携が課題ではないかと思います。

鈴木

おそらく最初の目標は高齢者、特に弱者と呼ばれるような高齢者の住宅なのかと思いますが、すぐにできると思ったことが1つあります。

介護の方々やケアマネージャーの方が高齢世帯を回っていらっしゃいます。例えば夏場や冬場の非常に厳しい季節に「ちょっと居室の温度を測っておきますよ」と、そこに小さな温度計を置いてくれば、1週間このお宅が何度だったかわかるわけです。これはそれほど抵抗なくできるのではないかと思いました。

永田

介護の方やケアマネさんに温度計を置いてもらうことはできるのではないでしょうか。夜はここまで冷えるといった記録がとれるような温度計を配ることができればとても効果的かと思います。

それは、予防ということで言うと、もう少し健康な一般の地域の方たちにも当てはまり、室温に気を付けようという取り組みは、介護に至る前の方たちにも発信できるのではないかと思います。

伊藤

今日お話しを伺って、例えば在宅介護を受ける状態になったり、救急で病院に運ばれたりするシーンもある中で、その方にとっての快適で豊かな住まいを新築、リフォーム、住み替えを含めてご提案できるよう、医療・介護の関係者、また様々なパートナーと連携しながら進めていかなければならないと感じました。

人生100年時代と言われている中、長い人生の多くを過ごす家の中で快適に、そして幸せに住んでいただく住まいの提供を目指していきたいと思います。

川久保

今日のテーマは「日本の住環境、再考」でしたが、皆さんのお話を聞いて、やはり自分自身、もう1回今日のテーマについてきちんと再考しないといけないなと思いました。そして、「アンチエイジング住宅」という表現よりも、「スマートエイジング住宅」という表現の方が好ましいかもしれないなと思いました。

人間はだれしも時間経過と共に身体は老いていきますが、その分、人生の経験値が増していって円熟してきますよね。同様に、住宅もスマートエイジングできるようになればよいなと。現在の日本の住宅は、建てた当初の資産価値が高く、そこからずっと資産価値が下がる感じですが、住み続けると、より住みやすくなる部分もあります。植物を植えれば、それが育っていき、視界に入ってくる緑が豊かになる。そのように付加価値が出てくるところもあるはずです。

人も住宅もそして社会もスマートエイジングできるように、研究開発を通してそのお手伝いができるように努力を続けたいと思います。

伊香賀

いろいろな知見が集まり、より健康によい、安全な住宅になっていくことを望んでいます。本日はどうも有り難うございました。

(2021年10月12日、オンラインにより収録)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。