慶應義塾

【特集:SDGs時代の企業の社会性】座談会:サステナブルな経営に欠かせない企業の社会性とは

登場者プロフィール

  • 小沼 泰之(こぬま やすゆき)

    その他 : 株式会社東京証券取引所取締役専務執行役員経済学部 卒業

    塾員(1984経)。1992年カリフォルニア大学バークレー校経営学修士課程修了。1984年東京証券取引所入所。上場部門、株式部門、国際業務部門を経て2021年より現職。

    小沼 泰之(こぬま やすゆき)

    その他 : 株式会社東京証券取引所取締役専務執行役員経済学部 卒業

    塾員(1984経)。1992年カリフォルニア大学バークレー校経営学修士課程修了。1984年東京証券取引所入所。上場部門、株式部門、国際業務部門を経て2021年より現職。

  • 村田 善郎(むらた よしお)

    その他 : 株式会社髙島屋代表取締役社長法学部 卒業

    塾員(1985政)。1985年髙島屋日本橋店入社。2015年常務取締役企画本部副本部長等を経て19年より現職。12年一橋大学大学院国際企業戦略研究科修了。一般社団法人日本百貨店協会会長。

    村田 善郎(むらた よしお)

    その他 : 株式会社髙島屋代表取締役社長法学部 卒業

    塾員(1985政)。1985年髙島屋日本橋店入社。2015年常務取締役企画本部副本部長等を経て19年より現職。12年一橋大学大学院国際企業戦略研究科修了。一般社団法人日本百貨店協会会長。

  • 渡辺 林治(わたなべ りんじ)

    その他 : リンジーアドバイス株式会社代表その他 : 東京大学大学院医学系研究科特任講師経済学部 卒業商学研究科 卒業

    塾員(1990経、2011商博)。野村総合研究所、シュローダー投信投資顧問を経て、2009年に上場企業に経営・財務をコンサルティングするリンジーアドバイスを創設。著書に『小売業の実践SDGs経営』等。

    渡辺 林治(わたなべ りんじ)

    その他 : リンジーアドバイス株式会社代表その他 : 東京大学大学院医学系研究科特任講師経済学部 卒業商学研究科 卒業

    塾員(1990経、2011商博)。野村総合研究所、シュローダー投信投資顧問を経て、2009年に上場企業に経営・財務をコンサルティングするリンジーアドバイスを創設。著書に『小売業の実践SDGs経営』等。

  • 茂木 修(もぎ おさむ)

    その他 : キッコーマン株式会社取締役専務執行役員国際事業本部長法学部 卒業

    塾員(1990法)。1993年ウィスコンシン大学(ミルウォーキー校)経営学修士。96年キッコーマン入社。2012年執行役員海外事業部長、15年常務執行役員国際事業本部副本部長等を経て21年より現職。

    茂木 修(もぎ おさむ)

    その他 : キッコーマン株式会社取締役専務執行役員国際事業本部長法学部 卒業

    塾員(1990法)。1993年ウィスコンシン大学(ミルウォーキー校)経営学修士。96年キッコーマン入社。2012年執行役員海外事業部長、15年常務執行役員国際事業本部副本部長等を経て21年より現職。

  • 岡本 大輔(司会)(おかもと だいすけ)

    商学部 商学部教授商学部 学部長

    塾員(1981商、86商博)。博士(商学)。1988年慶應義塾大学商学部助教授を経て、96年より教授。2019年より同学部長。専門は企業評価論、計量経営学。著書に『社会的責任とCSRは違う!』等。

    岡本 大輔(司会)(おかもと だいすけ)

    商学部 商学部教授商学部 学部長

    塾員(1981商、86商博)。博士(商学)。1988年慶應義塾大学商学部助教授を経て、96年より教授。2019年より同学部長。専門は企業評価論、計量経営学。著書に『社会的責任とCSRは違う!』等。

2022/06/06

「サステナブル&コミュニティー」へ

岡本

現在、「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉を聞かない日はないと言ってもよいでしょう。

将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすという持続可能の一般的な定義があり、そのためにSDGsに取り組もうということで、これはいわば人類共通のテーマになっているのだと思います。だからこそ17の目標、169ものターゲットがあるわけですが、私は、企業が「SDGsに取り組んでいる」と言うだけでは実は何も言っていないのと同じだと思っています。具体的には17の目標を一企業で全部やることは無理だと思うからです。

ある調査によれば、上場企業では平均11の目標に取り組んでいるということです。ですからSDGsのどこにウエイトを置いて取り組んでいるのかが重要です。その中で、従来から言われていた企業の社会性、社会的責任(CSR)というものが、どのように変化しているのか。そのあたりを今日は皆さまにお聞きしたいと思っています。

まずは、各社の現在の取り組みからお聞きしたいと思いますが、村田さんから、いかがでしょうか。

村田

当社は小売業という業態からSDGsの17の目標、そして169のターゲットの中でも強くかかわるテーマがあります。しかし、優先順位をつけることはしていません。ただ経営理念に「いつも、人から。」ということを掲げていますので、まずは人権という部分を中心に取り組んでいるとは言えます。

そして、われわれは小売業なのでお客さまの安心・安全や従業員の働きがいを重視しています。例えば最近では外国人労働者の雇用も増えていますので、そういった方々の受け入れや協働に関する様々な宣言も出しています。

それから商売柄、いわゆる環境問題ではフードロスに関する取り組みや、衣料品のロスが世界的に問題になっていますので、こうした課題にも生活者に近い産業として取り組んでいます。消費に業(なりわい)を置く小売業のわれわれが、どうやって循環型社会をつくることに取り組むかが、大きな課題だと思っています。

もう1つはまちづくり、地域における企業の果たす役割を考えています。私どもの経営理念は「いつも、人から。」ですが、戦略の大方針には「まちづくり」を掲げています。

われわれのまちづくり方針は2つあります。1つは地域全体のインフラとして、駅や病院や小売業を合わせた、まちづくりの1つの核テナントになっていくことです。そういった広域でのまちづくりが1つ。

もう1つはショッピングセンター(館)自体を1つの街と捉え、その中で回遊していただくということです。今、次世代型のショッピングセンター(SC)が問われ、従来のあり方から変わってきています。例えば防災拠点や生活拠点としての機能も求められている。お客さまがそこを訪れ、楽しく豊かな生活を送っていただくための提案も含めたまちづくりということでは、「SC」を読み替え「サステナブル&コミュニティー」センターとも言えるかと思います。

そのような次世代型のまちづくりということもSDGsの1つに入っています。

岡本

「サステナブル&コミュニティー」は、すごくいいですね。

村田

二子玉川の「玉川髙島屋S・C」を見ていただければわかるのですが、そこのエリアを開発し、1つのコミュニティーをつくっていくという戦略です。その核テナントが百貨店である髙島屋という考え方で進めています。最近だと流山おおたかの森などでもこうした拠点開発を行っています。

岡本

玉川髙島屋S・Cは車で行くと近いので、結構行きますが、あの地域は劇的に変わっていますね。

村田

そうですね。二子玉川の玉川髙島屋S・Cができて今年で53年目になり進化し続けています。日本で初めての郊外型ショッピングセンターと言われていますが、今は東急グループとともに駅の両側で魅力あるまちづくりに取り組んでいます。

コミュニティーを大切にする責任

岡本

では、次にキッコーマンの茂木さんにお話を伺います。

茂木

当社も、やはり古い会社なので、SDGsという話が出るはるか前、創業時からコミュニティーを大切にするという社会的責任の精神は持っています。大体日本の老舗と言われる会社は、そういう精神を持っているから事業を継続できたのだろうという感じがします。

キッコーマン自体は1917年に8つの個人経営の会社が合併してできた会社ですが、創業までいくと1600年代まで遡れます。4世紀近く、今の千葉県野田のエリアで、その地域との共存・共栄を頭に置いてずっとやってきました。

八家が合併したときに会社合併の訓示を社員に提示したのですが、その中には合併によって事業が大きくなれば、従業員1人1人の責任も大きくなるということや、社会全体の利害を己の利害と考えて事業をしなさいといったことが書かれています。加えて、責任ある事業運営や価値ある商品とサービスの提供、社会との協調を通して企業としての社会的責任を果たしていく、といったことが書かれています。

実際、過去には、例えば小学校をつくったり、実は大正12年に千葉県初の上水道をつくってから昭和50年に野田市に譲渡するまで、野田市の上水道は弊社が供給していました。また、今の東武野田線も、もともとキッコーマンの系列企業でした。要するに地域の核になるようなインフラを維持していたのですね。

そのような創業フィロソフィーは現在も受け継がれていて、今でも企業立のキッコーマン総合病院を持っていて、地域医療に相当程度資していると自負しています。私どもは経営理念で「地球社会にとって存在意義のある企業をめざす」としており、「グローバルビジョン2030」という長期ビジョンでも「地球社会における存在意義をさらに高めていく」と、しっかりと謳っています。

これは日本にとどまらず海外でも同様です。アメリカのウィスコンシンに初めて工場を造ってから50年になりますが、以来、海外の生産拠点では利益の一部を地域社会に還元しています。主に環境保全活動、文化保全活動、それから異文化の相互交流を進めることで社会に貢献していこうとしています。

SDGsに照らして言いますと、大きく3つの分野で貢献できないかと社内で整理しています。

1つが食品メーカーなので、食や健康の分野でどうやって貢献していくか。そして先ほど申し上げたように環境にはずっと気を配ってきましたので、地球環境をどうやって支えていくか。さらに、私どもが提供するのは個人の消費者に使っていただく非常に生活に密着した商品なので、人と社会に対してどうやって貢献できるかという、3つの分野です。

この中で、どのような活動ができるかを社内で整理し、17のゴールのうちのいくつかをきちんと実現していこうという考えで進めているところです。

岡本

お二人のお話を伺っていると、SDGsの考え方というのは、老舗企業にとっては当たり前の話なのですね。やっと言葉が追い付いてきただけなのではないかという気がしてきました。

村田

最近になって近江商人の「三方よし」という言葉がとり上げられていますが、われわれにも創業の精神として店是というものが4項目あります。その項目はほとんどがSDGsなり、ESG経営に当てはまります。おっしゃるように、後から概念や言葉が追い付いてきたという感じがします。

岡本

キッコーマンさんには家憲があると伺ったことがあります。

茂木

創業家である茂木家、高梨家、堀切家にはそれぞれの家憲があります。それ自体は別に会社経営にそのまま落とし込まれているわけではないのですが、考え方は一言で言ってしまえば「コミュニティーと共に生きる」ということかと思います。

従業員と同じものを食べなさいというような具体的なことから、「徳は本なり、財は末なり。本末を忘るる勿れ」といった大きなことまで書かれています。古い企業は、皆、そういう堅い経営をし、社会の中でちゃんと認められるような生き方をしてきたのだと思います。

SDGsが出てきた時、日本企業各社で「この目標はもうできている、これはできていない」と採点表のように使われて、欧米の企業がSDGsの17のゴールに取り組むプロセスと全くやり方が違うなと思いました。各社に社会との共存・共栄を今までもしっかりやってきたという自負がある中で、SDGsを「これはすでに結構できているよ」という意識で捉えていた部分もあったかもしれません。

村田

地域に貢献して、お客さまに支持されて初めて商売は成り立つのだという、日本的な「義」を重んじる精神が商売の中心にありますよね。それがないと利益はついてこないという考え方があると思います。

株主への説明責任

岡本

お二人のお話はすごく似ています。小沼さんは証券取引所で、少し視点が違うかもしれませんがいかがでしょうか。

小沼

皆さんがおっしゃる通り、SDGsというのは、日本の会社にとっては昔からやっていることが大部分だと思います。私が見てきた海外の会社や証券市場と日本のそれとを比較しても、日本は昔から地域貢献や社会貢献に取り組んできていると感じます。

海外、特にアメリカは、株主至上主義と言われ、唯一のステークホルダーは株主だという行き過ぎの傾向も見られましたが、今は揺り戻しがきています。逆に、日本の会社の一部には、株主をあまりステークホルダーとして強く意識していない傾向がありました。昔はそれでも問題はなかったかもしれませんが、日本の株式市場が海外投資家にも開かれてきて、現在のように外国の投資家が株式の約3割を保有するという状況になると、海外の株主との関係も意識しなければいけません。

海外の株主にもいろいろな属性の方がいます。今は短期で売買される方も少なくなり、よりガバナンスを重く見て長期的視野に立って投資先の企業に伸びていってほしいと思う投資家がだいぶ増えてきています。

その中でわれわれは企業が持続的に成長していくために、海外も含めた株主と対話をしながら、いい意見は取り入れていく仕組みを提案しています。3800社も上場会社がありますので、体制づくりはまだまだこれからという会社もありますが、今後の取り組みを促していきたいと思います。

SDGsという言葉は浸透していますが、17のゴールが指標になるのであれば、自らの会社がやっている取り組みを外国人株主に論理的に説明できなければなりません。日本では「あうん」の呼吸で済んでいても、外国の投資家には、こういった論理でやっていて、数値的にもここまで出ていると言わないとなかなか納得してもらえません。

特にマーケットの立場から見ると、グローバルで待ったなしの状態なのが環境問題、特に気候変動の問題です。東証の市場再編後における「プライム市場」の会社の皆さんには、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)、またはそれと同等の枠組みに基づいた開示の質的・量的な充実をお願いしています。

一方、東証の上場会社は、ほとんどが日本の会社なので、日本のコミュニティーの中での社会的課題、例えば高齢化問題や医療問題など、海外ではあまり意識されない課題もあります。そういった日本ならではのテーマの重要性もしっかり説明し、海外の株主にもわかってもらえる対話のチャンネルをつくることが大事です。

グローバルで求められるものと、日本ならではのものの2つに注目したいと思っています。

岡本

TCFDですが、基準が非常に曖昧なような気がします。様々な企業が、環境報告書を出すわけですが、報告の基準がはっきりしていなくて皆さんバラバラな言い方をされているので比較ができないように思うのです。

小沼

気候変動をはじめ、サステナビリティに関連する基準は、2、3年前は乱立していて困っていましたが、現在極めて速いスピードで集約に向けて話が進んでいます。

国際会計基準を運営しているIFRS財団が、会計基準以外にサステナビリティ基準を策定する国際サステナビリティ基準審議会(International Sustainability Standards Board : ISSB)を昨年11月に立ち上げました。ISSBからは、本年3月末に公開草案が公表され、本年7月まで市中協議が行われているところですので、本年中には正式な基準として策定される見込みとなっています。

また、日本でも、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)という団体が本年7月に設立されますが、ISSBに対応する日本側のサステナビリティ基準の窓口をつくる作業が始まっています。さらに、法定のディスクロージャーの枠組みについても、議論が進みつつあります。現在は、コーポレート・ガバナンス・コードに基づき、取引所の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に気候変動やサステナビリティへの取組状況を書いていただくことをお願いしていますが、この先は有価証券報告書に一定の欄を設けて、そこに記述いただく流れとなることが想定されています。

有価証券報告書は法定開示書類なのでかなり硬い表現になりますが、場合によっては、そこからご自身がより自由に書いているサステナビリティ報告書のようなものをリファーしていくことはどうかという議論が、政府の中では始まっています。

岡本

何もかも入れると統合報告書がとても大きくなってしまって、財務報告と非財務報告、CSR報告、環境報告の全部をまとめるのは無理でしょう。ポータルサイトのように入り口だけあるのなら、読むほうも便利だと思います。ぜひ整理していただければと思います。

SDGs経営のステップ

岡本

では渡辺さん、コンサルタントという立場からお願いします。

渡辺

私はコンサルタントとして、上場企業がSDGs経営を推進するのをサポートし、社会がより豊かなものになっていくことをお手伝いしています。

SDGsを経営戦略にどう融合すればよいかがわからない、あるいは、SDGsを含めた非財務情報を投資家にどう説明すればよいかがわからない会社が多いのは事実だと思います。

そこで私の会社では、経営学の理論、統計データ解析、現場へのインタビューに基づき、企業が自信を持って進めていける、その企業ならではのSDGs経営をコンサルタントとして助言しています。また、投資家向けIR戦略として、自社の長期的な発展を支えてくれる株主づくりにつながる情報発信をコンサルティングしています。

岡本

やはり企業によって、だいぶ理解が違うという感覚がありますか。

渡辺

はい、企業によってSDGs経営の理解は異なります。そこで理解度に合わせたサポートが必要になります。まず重要なのはゴールを確認することです。企業の目的は長期的に維持発展していくことです。売り上げが伸びて儲かって、しかも社会的に良い会社であることが必要です。

ゴールへの道筋であるSDGs経営は3段階に整理できます。

第1段階は「スタート」です。会社が大事にしている社是、経営理念、ビジョンを明確にし、経営トップがSDGs経営を決意し、全体的な経営方針を決定し、組織に方針を浸透させます。

第2段階は「SDGs戦略」です。経営方針に基づき、経営戦略として、長期10年の戦略、中期5年計画の中で、SDGsや社会性の視点で何に取り組んでいくかを定めます。有価証券報告書の中でも投資家は長期戦略や中期計画をすごくよく見ています。小沼さんから有価証券報告書の法定開示の中に、こういったことが盛り込まれていくというお話がありましたが、社会性、SDGsの視点を経営戦略にどう融合していくかはとても大事です。

SDGs戦略では、SDGsに取り組む基本方針と推進体制も構築します。もちろん、ステークホルダーである従業員、地域社会、環境、株主との関係を強化する具体的な取り組みも含まれます。重要性が高まっている健康は、従業員と地域社会で改善させるのが企業の役割です。そのうえで非財務情報の開示を強化するのです。

第3段階は「競争力の強化」です。SDGs戦略が絵に描いた餅にならないよう、実際に競争力の強化に結び付けることが重要です。

各社の状況を整理すると、第1段階はほとんどの会社ができています。しかし第2、第3段階までできている会社は少ない。経営戦略にSDGsの視点を融合するプロセス、競争力に具体化する手法は、皆さんが悩んでいるところではないかと思います。

岡本

収益性と成長性、つまり儲けて伸びていくことは会社にとって非常に重要なことです。しかし、私は現代の特に大企業は社会的影響力がすごく大きいので、自分だけが儲かって伸びているのでは駄目だと思うのです。そこでもう1つそこに加えて、社会性を並べておいたほうがいいわけです。

儲けて伸びていくという戦略はどの会社ももちろんある。でも社会性も重要だということを皆、わかってはいるけれど、それが、会社の経営とどういう関係になっているか、きちんと経営戦略としてつながっているかということは、どうも怪しいところが多いのではないかと思っています。

髙島屋さんとキッコーマンさんは、そこがつながっているので、できている企業はそれでいいのですが、できていない企業も多数あるのではないかという気はします。

収益性と長期的な投資

小沼

すごくよくわかります。やはり皆さん悩まれていますよね。

昨事業年度で8兆円の自社株買いがあったということです。もちろん自社株買いを戦略的にやられるのもいいことだとは思いますが、投資家にお金を返すだけではなく、より積極果敢な投資を会社がきちんとしているのかという観点も大事かと思います。

どうしてもサステナビリティの対応というと、目の前の数年のコストがかさんでしまって収益性が下がるのではないかという懸念がありそうです。今ここで投資しておくと、5年、10年のタームで、安定した成長がその先にくるかもしれないものの、自信がなく、既存の株主や他のステークホルダーに説明しきれないということで皆さん悩まれているのかなと思います。そこを一歩踏み込めれば、とても良くなると思うのですが。

渡辺

株式市場で変化を感じます。アナリストの関心は以前、1カ月先のニュースフロー、3カ月先の4半期業績が中心でした。最近は1~3年後に会社はどうなるかという話が増えてきました。投資家による企業評価の時間軸はもっと長くなって欲しいと思います。

長期で会社を応援してくれる株主づくりを会社は強化すべきです。財務戦略と連動させ、5~10年タームで強みを発揮し、社会を良くすることをアピールする。将来の事業機会の獲得とリスクの軽減につながるからです。研究開発、地域社会との関係強化、従業員の健康改善などをやらないと、時代の変化を乗り切れないことを、社長はパッションを持って説明すべきです。

小沼

製薬会社のエーザイがアフリカに無料で風土病を治す薬を何億錠と配っているそうですが、それは1~2年タームでは全然儲からない。でも、10年後のROE(自己資本利益率)がどうやってプラスに転じるかというシミュレーションをいろいろなデータを駆使して、自信を持って説明されています。

そういう説明によって外国の投資家の方たちが、「わかった。信じて投資しよう」ということになるのだと思います。

社会性と収益性の関係

岡本

収益性、成長性、社会性の中で、収益性が短期的な目標で成長性が中長期的な話、社会性は長期、あるいは私は超長期と呼んでいますが、そう簡単にすぐリターンはない、だけど長い目で見ると、戻ってくるという考えがあると思うのです。

村田

成長性と収益性はある意味、計量的なもので数値化できます。一方、社会性は定性的なものですね。持続できない経営は意味がないというのは、その通りだと思います。

岡本さんに質問なのですが、われわれは、まず企業である以上はきちんと利益を出していかなければいけないと思うのですが、社会性がある企業はより成長する、収益力があるという相関を学術的に測る方法はどのようにあるのでしょうか。

岡本

学会でこうだという決まったものはありませんが、私は個人的にはやっています。まずトップが社会性の何たるかを理解していないものは実現しないと思います。そういう意味で、社長に話を伺って、そこの会社はどのぐらい力を入れているのかインタビューする方法が1つです。

それからインタビューだと数が少なくて計量的に測れないので、アンケートを採り、その回答を大数観察で分析しています。30年ぐらい前にアンケートを行っているのですが、その時にどう答えたか、その企業がその後、どのくらい儲かって伸びたかどうかを計算すると、明らかに90年代にすでに社会性のある活動をやっていた企業は、利益率も成長性も高いのです。サンプルは少ないですが200社ぐらいで見ると、結果が見えてきます。

村田

なるほど。有り難うございます。

渡辺

岡本さんの研究では社会性がより重要になる局面があって、業績が回復する時には社会性がより重要だということでした。

例えば、今は百貨店業界がコロナ禍で赤字だから、再生を図りたい。そういう時には社会性がすごく効果があるのだと思います。

岡本

その通りです。社会性だけでずっと儲かることはあり得ません。でも社会性がないと逆にピンチの時に消費者、投資家、あるいは地域社会の皆さまからも支持は得られなくなっていきます。そうするとその企業は存続できないことにつながるので、そういう時にこそ必要になりますね。

SDGs時代に企業に向けられる視線

岡本

振り返ってみると企業の社会的責任というのは、最初は1960、70年代の高度成長期に公害問題が出てきた時に注目されました。

次にバブルの頃にメセナやフィランソロピーという言葉が流行り、これはいわゆる社会貢献と言っていました。これも社会的責任の1つだと思います。それから2000年代に入り、CSRという言葉が出てきました。

CSRは日本語にすると企業の社会的責任ですが、どうも近年、その内容が変わってきているのではないかという気がしています。SDGs時代になり、CSRが果たして変化しているのか、あるいは、何かが変化させようとしているのか。そのあたりはいかがでしょうか。

茂木

実は、うちの会社はあまりCSRやメセナということには踊らなかった部分があります。CSRという言葉が出てきた当時、うちがやっているのはCSRではない、昔からずっとやっていることなんだと言っていました。

ちょっと別の視点になってしまうかもしれませんが、SDGsが出てきたことで、企業として取り組むべき社会的課題のアジェンダがより明確になってきたと思うことはあります。

アメリカやヨーロッパの経営者と話すと、SDGsはチャンスなのだと言う。社会的な問題があるのだから、課題解決のソリューションを提供すれば儲かるという視点なのです。SDGsは、何かをやってはいけないということではなく、何かいいことをする、「Doを後押しする」仕組みになっていると言うのです。そういう意味では、欧米の経営者のほうが自然な受け止め方をしているという感じがします。

私どもは消費者の方を対象としてキッコーマンというブランドで商売していますが、アメリカではミレニアル世代やジェネレーションZと言われている若い世代の人たちは、企業が社会課題の解決に真摯に取り組んでいるかどうかを非常によく見ていて、とても意識が高い。

アメリカ、ヨーロッパでは、そういう取り組みをきちんとしている企業は選ばれる企業であって、そうでない企業は無視される。彼らが例えば投資先として、また就職先として、またはサービスや商品を買う際の選択の1つの尺度になってきていると思います。

日本ではまだちょっと違う気がしますが、欧米でのビジネスではそこは真摯に取り組んでいかないと置いていかれてしまう、ブランドが陳腐化してしまうという危機感があります。

小沼

「ブランドが陳腐化する」というのはわかりやすい表現ですね。つまり、やらないことによる負のコストがあるということですよね。

茂木

そうですね。

小沼

そこが1つ論理的な説明になっているのだろうなと思います。企業風土は海外でも場所によって異なっていて、欧米でもイタリアは日本と同様にオーナー系の会社が多かったりします。しかし、投資によってブランドを維持する、あるいは陳腐化を防ぐ、といったことを論理的に説明することを社会が望んでいる傾向はどこでも出てきているのかと感じます。

茂木

環境問題にしても、少し前までは経営者の皆さんはコストだと思っていましたが、今は本心から言っているかは別にして、「これは投資なのだ」とおっしゃる方が増えてきている。私どももアメリカやヨーロッパのビジネスが大きいので、これは投資だという意識は強くあります。

また、この先を考えると非財務情報の開示ということで、SDGs関連の開示が求められるものが増えてくると思いますし、そのあたりは企業として積極的に開示していくことが重要になってくると思っています。

Z世代の消費行動

村田

茂木さんがおっしゃったジェネレーションZですが、日本も実は面白いデータがあります。「Z世代」は生まれた時からインターネットに囲まれ、ある意味、フェイクニュースが溢れている中で育ってきている。すると、何が正しいのかという時の1つの尺度として、有り難い話ですが百貨店は信用できるモノを扱っている、として選ばれるのです。

Z世代は、ブランドを買うにしても百貨店に敷居の高さを感じない世代であるようです。そういう傾向は日本でも現れていて、われわれもSNSや情報発信のマーケティングをやると「Z」の方の割合が意外に高いという傾向があります。

岡本

若い世代が敷居を感じないというのは面白いですね。

村田

昔は百貨店に行くならちゃんとしたものを着ていかなければ、という感じがありましたが、Zの方はカジュアルに店に来て、いいものがあって間違いなければそこで買うという、割り切った消費行動をされています。

世界でも4分の1がZ世代になってきていますから、次のステージはそうした人々に響くことをきちんとやっていけば、結果としてSDGsの項目にも当てはまっていくのだと思います。

岡本

それは日本だけではなくて海外でも同じですか。

村田

同じです。うちはASEAN・中国の4店舗しかありませんが、そこでもそういう意識は高いです。

また、当社は衣料品の再生もやっていますが、これはコストがかかります。回収しても百貨店ではリサイクルできませんから、取引先の方にお金を払って持っていってもらうわけです。

特にわれわれは完全なサーキュラーエコノミーとして循環し続けるケミカルリサイクルといわれるものを再生素材の1つとして取り扱っているため、まだ原材料費が高いのです。それに加えて回収コストがかかると、それでもやるという理由を社内に説明していかなければいけません。

実際にそれを売ったり回収するのは従業員ですから、従業員にそこまでやる意義を徹底していくかが今の課題です。まだまだ儲からないのでコストとして認識せざるを得ないのですが、でもそれは投資なんだということを言い続けなければいけません。今はそういった過渡期にあると思います。

岡本

全部がコストだけれど、将来に対する投資だと捉えていくと、それが長い目で社会性につながっているということですね。

若い世代の投資意識

小沼

若い世代はSDGsの意識が高いですよね。加えて、私は東証で金融リテラシー推進業務も担当していますが、コロナ下で若者の株式投資や資産形成に対する意識もすごく高まっています。一部のオンライン証券さんの口座はものすごく伸びてきています。

いろいろなリスクが高まる中で、きちんと自分事として資産形成やライフプランを考えていくという意識が高まってきたのが大きいのではと思います。さらにこの4月から成年年齢が18歳に引き下げになり、学校教育の中でも学生指導要領の中に金融経済教育が盛り込まれました。

もう1つ、資産形成だけではなくて、少額でも株主になって好きな会社を応援するという「共感投資」がZ世代の人たちには増えてきています。これもまた1つ大きな変化なのかなと感じています。われわれとしては若い人たちの今後に期待しているし、それに見合うだけのしっかりとした情報発信をしなければいけないと思っています。

中高生や大学生向け、あるいは会社の中でDC(確定拠出年金)が一般化してきて、それを導入すると入社10年目、20年目に定期的な職員の福利厚生のメカニズムとして、しっかり人事部の人が社員に研修をすることも義務付けられています。そういうものにも取引所として人を派遣してお手伝いしていこうとしています。

村田

コロナ禍を経て若い世代の消費行動が資産形成的な消費に向いていることも感じますね。

昔は衣服のように、使用したとたんに価値が落ちていくものが好んで消費されていましたが、今は時計や不動産、アート作品といった、価値が目減りしないものに消費、つまり投資をしていく傾向がある。若い方も将来に残っていくものに志向が向いているようなのです。

高額な時計が中間層にとにかくよく売れています。われわれは資産形成型投資と言っていますが、そういう傾向が非常にあると思います。

岡本

若い人の消費行動も変わってきているということですね。

ステークホルダーの考え方

岡本

次にリスクが多発する時代においてステークホルダーをどのように考えるかお聞きしたいと思います。

アメリカでも2019年にビジネス・ラウンドテーブル(米国のビジネス・ロビー団体)が株主至上主義をやめようという、ステークホルダー資本主義を出しています。しかし、その後「ハーバードビジネスレビュー」によると、実はビジネス・ラウンドテーブルに署名した企業は、署名しなかった企業に比べて従業員をより解雇しているということでした。

コロナで厳しくなり、余裕がなくなっているのだと思うのですが、それでは全然社会性がないと思います。そのあたりをどう株主と付き合っていくべきでしょうか。

小沼

アメリカは株主至上主義と言われていましたが、必ずしもそうでない会社もあります。ジョンソン・エンド・ジョンソンのCredo(企業活動の拠り所となる価値観や行動規範を簡潔に表現した文言)は、まさにマルチステークホルダーを謳っているのですね。ステークホルダーの順番が書いてあり、最後に株主を入れておいてくださいというのがメッセージだそうです。アメリカでもそういう考えがあることに驚きましたが、実際、いろいろなタイプの投資家も出てきているのだと思います。

日本ではマルチステークホルダーの考え方を昔から普通に意識しているのですが、逆に難しいのは中長期のサステナビリティ投資だと思います。

村田

われわれの株主の内訳を見ますと、第1に株主優待があるということで個人株主が非常に多く、どちらかというと長期保有の方が多いです。KPI(重要業績評価指標)にしても、一時的なROE向上ではなく、むしろ中長期的にみて企業価値を上げていくことが大事だと説明し、そのために行動しますと言っています。

機関投資家の方に対しても中長期の戦略をきちんと説明して、まちづくりは時間がかかることを理解してもらわなければなりません。理解していただけない方も多いですが、それはやり続けるしかないことだと思います。

小沼

自由なマーケットですから、会社経営の皆さんにもどのような投資家に投資してほしいかを発信する権利はあるのではないかと思います。

茂木

私どもも例えば、これからアフリカに進出しようといった時、アジアの調味料を彼らがいつも食べている食事で使ってもらうには、すごく時間がかかるわけです。ブレークするには30年ぐらいかかるかもしれません。

それだけの長期的視点で見てくれるような株主でないと、「なんでアフリカなんかに行ってお金を使っているんだ」という話になる。だから、支持をしてくれる株主への適切な説明は非常に重要だと思います。事業を長期的視点で成長させて収益もちゃんと上げる。そのためには、株主だけではなく従業員も含めたほかのステークホルダーとの信頼関係をつくることも非常に重要になっていると思います。

株主との信頼関係があれば、回収に30年かかりますと言っても許してくれるはずです。短期的・中期的・長期的という話で言えば、10年後にこういう企業になっていますというビジョンを立ち上げ、3~5年ぐらいの中期的な計画を進めながら、業績だけではなく社会性も含めてコミットしたものを実現して実績を積み重ねることで、信頼関係ができてくると思います。

それが上手くつくれれば、たぶん長期にわたって利益をしっかり上げられる企業になると思います。口で言うのは簡単で、やるのは非常に難しいのですが。

岡本

マルチステークホルダーというのは、いろいろなステークホルダーそれぞれに違うニーズがあるわけで、全部同じ対応はできません。けれども、中期的・長期的と考えていくと、皆さんどこかで納得してくださると思うので、方針が一貫していることが重要だと思います。

投資家との関係をどう築くか

渡辺

キッコーマンさんはここ数年で株式時価総額が増大しました。海外の投資家からも、高く評価されていることについてどう思われますか。

茂木

株価が高い、安いというのは経営としてはなかなか言えないことで、それは市場に評価していただくべきものだと思います。1つ言えるとすれば、国際事業を中心に私どもは業績を伸ばし、基本的にはお約束したことについて実現してきているので、そのあたりを信頼していただいているのが一番大きいのかなと思います。

その信頼を得るために、今までIR等で海外の主要な都市に出向き、そこでしっかりと短期だけではなく中期的・長期的な戦略についてもご説明して同意をもらっていることも大きいのではないかと思います。

渡辺

わかりました。それから小沼さんに伺いたいのですが、年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がサステナビリティ投資を強化しています。こうした動きは機関投資家の行動を変え、企業側に求めるものも変化していくのでしょうか。

小沼

海外の機関投資家の中には、上場会社とたびたび会って議論する体制にある会社と、そうでもない会社がある。中にはわれわれにも厳しいことを言ってくる機関投資家もあり、刺激になっています。

一方、これから重要になるのが国内の機関投資家だと思います。運用会社も含めてGPIFのお金を預かっている国内の機関投資家は、別のところで上場会社と関係があって、これまではあまり物言いがしにくいところがあった。しかし、今は運用会社も企業グループと分かれて純粋に投資家としての行動を取らなければいけなくなってきたので、国内の機関投資家からの意見が国内企業に伝わってくるようになりました。日本企業は、海外の投資家に言われるより、日本の事情を知っている国内の機関投資家に言われるほうが響きます。だいぶ国内の投資家が意識されるようにはなってきたと思います。

岡本

従業員や取引先と違い、株主とは恒常的につながっているわけではありませんね。

小沼

その通りで、資本というお金の部分だけでつながっているわけです。しかし、現在、様々なタイプのリスクが出てきている中で、株主という投資だけに限られたステークホルダーにいかに説明していくかは、会社の経営にとっては負担である一方、感度を高めるためにはとてもいいことなのだろうという気がします。

最近、私は新規上場しようとしている会社への支援活動をやっており、上場を考えている会社の様々な社長と話をする機会があります。上場のメリットは何ですかと聞かれれば、社会的信頼が得られ、採用ができるようになる、お客さまから信頼されるようになって商売が伸びますと話しますが、最近それに加えて「感度を高められる」とも言います。

未公開企業だろうと上場企業だろうと、いろいろなリスクにさらされていますのでそれが予知できる可能性が高まるのです。

岡本

社会との接点を自ら持つことになるわけですね。証券取引所はこの4月から「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」と市場を新たに3つにわけられました。プライムである企業というのは、感度が高いということになるのでしょうか。

小沼

そうですね。株主の属性がよりいろいろなところにばらけることを期待しています。海外の視点も入れていただく必要が出てきていますので。

社会性と経営戦略

岡本

SDGsにある「持続可能な」ということは、それがいかに経営戦略と結び付いて理解できているかが重要だと思うのです。そして、そのことを株主や消費者の皆さんにどうやってアピールできるかが大切だと思います。

茂木

そうですね。求められてから開示するのではなくて、ホームページなどで日頃から開示していくことで、より信頼関係ができていくと思います。

村田

われわれもよく投資家やアナリストの方から、「こんないいことをやっているならもっとアピールしたら」と言われます。しかし、従業員の意識にSDGsが浸透して、企業の果たすべき責任や役割の大きさを自覚するというところまで至っているのか、という思いも一方ではあるのです。

コロナの2年間で、われわれは相当な営業の制約を受けました。ただ、それによって気付かされることがすごくたくさんあったのです。社会から百貨店はどのような存在として見られているのか、また百貨店が開いていることに対するお客さまの安心感も感じることができました。

最近でもウクライナのことでクラウドファンディングをしているのですが、寄付したお金の行先が気になるから、髙島屋がやっているクラウドファンディングだったら寄付しますと、すごい勢いで集まっています。

それくらい社会から信頼されている存在だというのが、1つの社会的責任というとおこがましいですが、あらためてコロナで気付かされました。

岡本

それが髙島屋さんならではのやり方なんですね。まさにそういった寄付は行っている側の信頼が問われるところだと思います。キッコーマンさんは確か、食糧支援をやられていますね。

茂木

そうですね。WFP(国連世界食糧計画)を通しての支援と併せて、弊社商品の寄付を行っています。

岡本

やはり食品メーカーとして食のことに集中するというのはいいですね。「その会社ならでは」というところが必要で、それぞれの企業がそれぞれの戦略、強みと関連したところで社会的責任を果たせばよいのです。そういう意味では、社会性は企業戦略と結び付いていると思います。

村田

ステークホルダーはたくさんあるし、濃淡もあるのですが、その中で株主というステークホルダーに対して責任を果たしていくためには、その他のステークホルダーに対する責任の取り方が前提になるのですね。それがないと、還元していくことができない。今はそういう時代であることを認識させられました。

小沼

引いていって最後に残るものが株主に返るということですよね。

村田

そうですよね。

岡本

あくまで社会のための企業なのですね。私の考えでは60年代の社会的責任は受け身的で、公害などで文句が出るので対処していたというレベルだと思います。次のメセナやフィランソロピーというのは、誰が何を寄付しているかをアピールしない「陰徳の美」という言い方をされていました。

そういう意味では、CSRになってようやく企業として堂々と会社の姿勢としてアピールする時代になったと言えます。

日本では社会的な貢献をやっているところが、堂々と名前を言うのは恥ずかしいところがあったのですが、それでは説明責任が果たせないので言わなければいけなくなってきたという傾向がますます強くなっているのではないかと思います。

SDGs時代と言われていますが、日本企業においては、やっているところは、ちゃんとやってきたのだということが今日は確認できました。本日はどうも有り難うございました。

(2022年4月5日、三田キャンパス内にて収録)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。