執筆者プロフィール
穴井 佑樹(あない ゆうき)
A non-classic(ノンクラシック)株式会社代表取締役メディアアーティストメディアデザイン研究科 卒業2014KMD修
穴井 佑樹(あない ゆうき)
A non-classic(ノンクラシック)株式会社代表取締役メディアアーティストメディアデザイン研究科 卒業2014KMD修
私は「自然はメディアである」という考えのもと、光や音、センサー、プログラムを組み合わせ、人や環境の変化に呼応する作品を制作している。
活動の原点は、高校時代のオンラインゲームづくり、かつて在籍していたアート・コレクティブ「チームラボ」でのアート制作チームの立ち上げ、そして慶應の大学院(KMD)で出会った仲間たちとの作品づくりにある。高校時代は画面越しの人々と感動を分かち合う喜びを知り、チームラボでは、目の前の人が作品に触れて表情を変える瞬間に立ち会った。自分がつくったもので誰かの時間や人生を少し豊かにできることに、表現する仕事のかけがえのなさを感じた。
大学院では、異なる専門性を持つ仲間とアイデアを交わし、実験を重ねながら、1人ではつくれない表現を形にした。その中で、技術は目的ではなく、まだ見たことのない体験を生み出す手段になっていった。
在学中に独立し、文化施設や公共空間、商業空間などで光や音の演出を手がける一方、国内外で作品を発表している。これまで、世界的なメディアアートの祭典ArsElectronicaや国立台湾美術館で作品を発表し、近年は毎年、欧州各地の芸術祭にも参加している。また、大分県立美術館の開館10周年記念作品として制作したインスタレーションは、同館に常設展示されている。
仕事でも作品制作でも、場所の歴史や人々の思いに耳を傾け、人と環境の関係を捉え直す。出発点は異なっても、そこで得た発見は2つの活動を行き来しながら、次の表現へと育っていく。
私が作品を通して見つめるのは、普段は見落とされがちな自然の気配や、目に見えないつながりである。自然は固定された風景ではなく、光や音、風、人の動きとともに絶えず変化し、表現を生み出す媒体だと考えている。センサーやプログラムを使うのも、技術を見せるためではない。人がそこに立ち、動き、耳を澄ますことで初めて現れる関係を、感じられるものとして立ち上げたいからだ。
作品は、私1人が完成させて観客に渡すものではない。場所や鑑賞者の存在が加わることで、その時にしかない姿になる。現在の活動も、人との出会いと小さな実験の積み重ねから輪郭を得てきた。これからも、まだ名前のない感覚に耳を澄ませ、仲間とともに光や音へと変えていきたい。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。