執筆者プロフィール
岩岡 孝太郎(いわおか こうたろう)
株式会社飛騨の森でクマは踊る代表取締役社長政策・メディア研究科 卒業2011政メ修
岩岡 孝太郎(いわおか こうたろう)
株式会社飛騨の森でクマは踊る代表取締役社長政策・メディア研究科 卒業2011政メ修
「広葉樹」という樹種をご存知でしょうか? 春に山を彩るサクラ、秋に木の実をつけるナラやクリ、葉を赤や黄色に紅葉させ、冬には落葉して春を待つ木々。これら全てが広葉樹で、実に多くの種が存在します。種類が多いということは、用途も多岐に渡ります。食料や建築資材、日用品や工芸の材料、そして薪燃料として地域の生活を支え、欠かすことのできない資源です(資源でした)。
私が、岐阜県最北部に位置する飛騨市に初めて訪れたのは2014年でした。市の面積の約94%が森林に覆われ、その内約3分の2が広葉樹の天然林であることが特徴の地域です。豊富な森林資源を背景に、1300年の歴史を有する大工技術・飛騨の匠を育み、家具産業を発展させてきました。しかしながら、現在、建築や家具に使われているのは、輸入材など地域外から仕入れる木材が主になっています。地域の森林資源に目を向け、未利用資源に新たな価値を与えるために、2015年に官民共同で設立したのが「飛騨の森でクマは踊る(通称ヒダクマ)」です。以来、飛騨と東京の2拠点で活動を行っています。
「森は木材ではない」を合言葉にして森に入り、文化的視点・生態学視点・創造的視点で自然環境と資源流通をよく観察することから始めました。滞在宿泊とものづくりの拠点施設・FabCafe Hidaを運営し、「森の多様性に人間の多様性を掛け合わせて挑む」という手法で、国内外の建築家やクリエイター、研究者、企業と飛騨で実施する合宿・ツアープログラムを行っています。地域の林業に関わるステークホルダーたちとの連携も欠かせません。木材としての価値はないとして、破砕していた細い木や曲がった木も、みんなが目にする場所に集めるように流通の仕組みを変えて来ました。協働から生み出すものは、建築や家具、プロダクトといった形あるものだけではありません。1つの森、1本の木に遡ることができるトレーサビリティを確立し、その人が立ち戻ることができる「森と人の関係」も同時に築いています。
誰かと森に入るたび、森には多層の「物語」があることを実感します。例えば、1頭のクマの目線で森を探索してみる。カレーのスパイスを探しに森に入る。毎回異なる物語が浮かび上がってきます。次はどんな物語で価値を共創できるか。飛騨の森でお待ちしています。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。