登場者プロフィール
海住 英生
海住 英生
近年の高度情報化社会の発展は著しく、大容量で超高速な情報処理が必要不可欠となっています。特に、PC、スマートフォン、インターネットに留まらず、昨今注目を集めているIoT、ビッグデータ、生成AIやフィジカルAIを含む高度な人工知能技術等においても、その重要性はますます高まっています。国内に目を向けると、IT機器の消費電力は国内総発電量(=約10,000億kWh)の20%にも上っているとの試算もあり、低消費電力化も解決するべき大きな課題の1つとなっています。このような現代の状況を鑑みると、大容量、高速、低消費電力を兼ね備えた「次世代デバイス(例えば、メモリ、センサなど)」の創製は必要不可欠です。
このような背景の中、当研究室では、「次世代デバイス」の創製、並びに、その学理の確立を目指し、磁性(スピントロニクス)を基軸とした、ナノサイエンス、機能性分子化学(キラル分子、高移動度分子など)、さらにはフレキシブル工学が融合した新たな分野横断的最先端研究を推進しています(【図1】)。
ナノサイエンス・スピントロニクスでは、磁性ナノ薄膜のエッジを用いたナノ接合デバイスにおいて、室温磁気抵抗(MR)効果(Nanoscale Advances 2022)、キラル誘起スピン選択性(CISS)現象(Nanoscale 2025)、トンネル磁気抵抗効果など様々な現象を見出した他、7nm程度の超微小接合のデバイス創製にも成功しました(Discover Nano 2025)。機能性分子・スピントロニクスでは、核スピンレス原子で構成される分子やキラル分子を用いたスピンデバイスにおいて分子由来の明瞭なMR効果の観測に成功しました(JMMM 2025, APL Materials 2026)。フレキシブル・スピントロニクスでは、曲げることによるMR効果や磁気異方性の変調に成功しました(JMMM 2023, Physica B: Condensed Matter 2026)。
福沢諭吉先生の「学問のすゝめ」では、学問は実生活に役立つ「実学」であるべきと繰り返し述べています。学問を細かく分断するのではなく、社会の問題解決のために幅広く学ぶことを奨励しています。「一科の学問だけでは世の中は動かせない」という趣旨の考えをたびたび示しています。
融合研究が切り拓く次世代デバイス、並びに、その学理の構築は、世の中を豊かにし、人類・社会に大きく貢献すると考えられます。