登場者プロフィール
宗像 花草
政策・メディア研究科 後期博士課程3年所属プログラム:ヒューマニティーズとコミュニケーション(HC)
宗像 花草
政策・メディア研究科 後期博士課程3年所属プログラム:ヒューマニティーズとコミュニケーション(HC)
就職を経て、自分のペースで学びを継続
修士課程を修了したのは約20年前で、学部と修士課程の間にも空白期間がありました。夫の仕事にあわせて国外に住んだり、夫が大学院で学ぶのを支えたり、家族の変化にも対応しながら自分の学びを進めてきました。研究は人生の楽しみのひとつであり、社会人としての経験から生まれた気づきや疑問が新しいテーマを切り開いています。
中学時代から海外のファッション誌の写真が好きになり、アーティスティックな写真を仕事にしたいと思っていました。そこから絵画を中心としたアート全般に興味を持ち、リベラルアーツ系の学部時代は美術史を中心に履修しました。
結婚後にイランで専業主婦をすることになり、若い女性たちの伝統工芸グループにボランティアで参加したこともあります。アートや異文化との出会いが重なって、関心の対象も徐々に豊かになっていきました。
修士課程での研究は、英語教授法の分野でモノやイメージを教材とした発話に焦点を当てました。その流れで大好きなアートを追求するうちに縁が広がり、美術館でエデュケーターを務めたりすることになりました。アートと言語は、どちらも感覚や情報を伝えあうコミュニケーションです。そんな共通点に注目したことが、現在の博士研究につながっています。
スコットランドの博士課程がコロナ禍の影響で継続できなくなり、国内の大学院を探してSFCに魅力を感じました。分野がミックスしやすいので私の研究にも向いており、受験のプロセスや受講の内容も興味深いものばかりでした。海外のEdD博士プログラムに相当する内容で、分野横断型の研究ができるのは政策・メディア研究科の大きな魅力です。
アートが起動させる外国語学習の意欲
政策・メディア研究科で学び始めたときから、慶應義塾大学の開学の精神でもある「半学半教」という言葉を思い出していました。現在の私も美術大学で学生に教える立場にあり、博士課程の学びを進める場所として最適です。
現在の研究テーマは「アート鑑賞手法を応用した英語教育」。アート鑑賞は学習者の主体性に委ね、多様な視点を言語で表現してもらう側面もあります。それを英語教育に応用することで、従来の語学習得からは得がたい協働的な学習経験が生まれる可能性があるのではないかと推測しています。
具体的な研究手法は、アート作品について他者と英語で自由におしゃべりをしてもらうこと。美術大学の学生たちにファシリテーターや参加者として協力してもらい、フィードバックをもらって内容を分析します。学習者が互いの発言に応答し、思考を深め合いながら学びを共創する過程に注目しています。正解のない抽象的なアート作品を語ることが、外国語の使用にどんな影響を与えるのかを明らかにするのが目的となります。
このようなセッションを体験してくれた学生たちからは、「英語の方が日本語より伝えやすかった」「気持ちを素直に表現できた」といったコメントもいただいています。感情に動機づけされた発話が、これからの外国語教育に活かされる可能性を探っているところです。
研究の過程で気づいたのは、人間は黙っているときでも言語活動をしているということ。美術館という場所でアートを語るときは、沈黙しても周囲の雰囲気を乱すという恐れはあまりありません。心の中にあるイメージをまだ言葉にしていない状態の方が、発話しているときよりもたくさんの考えを巡らせているのではないかという意見もありました。じっくり考えてから言葉にする経験を積み重ね、言語表現が豊かになっていく可能性についても考えています。
学び続ける人生にぴったりの場所
藁谷郁美先生をはじめとする指導教員の先生方からのサポートは、博士研究にとても役立っています。SFCでは近接分野の先生たちによる合同のアカデミックプロジェクトがあり、修士課程を含めた学生たちの合同研究会が開催されたりします。論文執筆に際して、査読の方からアドバイスをいただける環境もありがたく感じています。
個人の研究と並行して、都内の美術館で「若者の居場所、学びの場としての美術館の可能性」についての共同研究も進めています。これはスキルを身につけるというよりも、主体的な学びや自己との出会いが展開できそうな楽しいプロジェクト。生涯学習として美術館という場を活用し、日々の生活を楽しくできたらいいなと思っています。
アカデミックな研究には、対岸の見えない海に漕ぎ出すような心細さとワクワクがあります。後期博士課程の後も学びは続くので、まだまだ折り返し点にも至っていません。仕事、育児、介護などの生活と折り合いがつけられれば、自分の研究はどんどん深められます。政策・メディア研究科 は、そんな社会人の学びにも理想的な環境です。
研究室紹介
キーワード:外国語教育・ドイツ語教育・ドイツ文学研究・ことばとメディア