毎年どこか、新しい街を訪問できたら幸せだ。国際担当と言っても、毎年割と同じところばかりを回っている気がする。どこか一箇所、新しい街に行きたい。
今年はアメリカ南部ノースカロライナ州のチャペルヒルに行くことができた。たぶんノースカロライナ州自体が初めてだ。チャペルヒルは、その名の通り、18世紀に建てられたチャペル(教会)がある丘で有名だが、何と言ってもノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC)がドンと構える大学街である。
同校では常任理事仲間の奥田暁代さんが博士号を取得している。留学時代の話を聞いたことがあり、興味を持っていたところ、先方のヴァイス・プロボストのヘザー・ウォードさんが三田キャンパスを訪問してくれた。その縁で8月に訪問できることになった。
羽田空港からワシントンDCまで13時間弱。2時間45分の待ち合わせで次の飛行機に乗り、1時間15分ほどでローリーダーラム空港に着く。そこから車に30分ほど乗るとチャペルヒルに着く。
ローリーダーラム空港のローリーとはノースカロライナ州の州都ローリーのこと。ローリーにはノースカロライナ大学がある。ただし、チャペルヒルにあるノースカロライナ大学チャペルヒル校とは系列の州立大学だが別運営の大学だ。ダーラムとはデューク大学のある街ダーラムのことだ。ローリー、ダーラム、チャペルヒルは、それぞれ有力な大学を抱え、リサーチ・トライアングル(研究三角形)と呼ばれているそうだ。
デューク大学とノースカロライナ大学チャペルヒル校は早慶のようなライバル関係にあるらしく、バスケットボールの定期戦は盛り上がるそうだ。ノースカロライナ大学チャペルヒル校はバスケットボールのスーパースター、マイケル・ジョーダンの母校だ。バスケットボールをやる学生にとっては憧れの大学で、慶應義塾から交換留学で行く学生もそれについてうれしそうに報告してくれる。
てっきり夏休み中だと思っていたノースカロライナ大学チャペルヒル校のキャンパスには学生が溢れていた。ちょうど授業が始まったばかりで、学生たちはあちこちの授業を覗くために忙しくキャンパスを歩いている。何と言ってもキャンパスが広大だ。特別キャンパスツアーをやってもらったが、1時間歩いたらたっぷり汗をかいた。東京と変わらないぐらい蒸し暑い。
驚いたのは、フェデックスの寄附で建てられたフェデックス・グローバル教育センターの壁に掛けられた額だ。広島に原爆が落とされた後、ノースカロライナ大学チャペルヒル校は、広島大学の図書館再建のために本を送ったそうだ。その支援60周年を記念して広島大学から送られた屋根のタイルの一部で、5000度の熱に焼かれたものだという。それを多くの人の目に触れるところに置いてくれている。
リー・ロバーツ学長への挨拶やバーバラ・スティーブンソン副学長たちとの打ち合わせ、そして、慶應義塾大学薬学部と密接な協力をしてくれている薬学部のみなさんともミーティングを行った。さらには慶應義塾の学部とは学生交換も行っているので、その担当者たちともアップデートできた。
この秋からノースカロライナ大学チャペルヒル校はU7+アライアンスに参加してくれる見込みだ。U7+はG7に対応して作られた47大学のアライアンスで、伊藤公平塾長が全体の議長を務めている(塾長室だより No. 26 パリからパリへ:グローバルな大学アライアンスでの役割)。そこにアメリカ南部の視点が入ってくるのは大変ありがたい。
ここ数年、アメリカの大学はさまざまな変革の波に洗われている。しかし、1795年創立でアメリカ最古の公立大学であるノースカロライナ大学チャペルヒル校は動揺を感じさせない。チャペルヒルの街中を歩いても落ち着いていて安全だ。都会の大学にはない余裕がある。この大学のキャンパスで、国際センターの交換留学で派遣された塾生がじっくりと勉強に励んでくれたら言うことはない。アメリカはまだまだ懐が深い。