慶應義塾

説明会を楽しむ|総合政策学部長 加茂 具樹

公開日:2026.06.30

ここ数年、春学期に慶應大阪シティキャンパスで、総合政策学部と環境情報学部は合同で学部説明会を開催している。学部長からの簡潔な学部説明の後、在学生による学生生活の紹介、湘南藤沢キャンパスに併設された学生寮に住む在学生(寮生)による寮生活の紹介、つまり寮生による寮生活の紹介を経て、約1時間の自由質疑の機会を設けている。

説明会は、どこでもそうだが、ちょっとピリッとした雰囲気ではじまる。冒頭の学部長による説明の時間は15分ほどに抑えている。詳細に説明をしようとすると、学部紹介パンフレットの内容をなぞることになってしまう。そもそも、パンフレット作成に注力し、伝えたいことはほぼ盛り込んでいるため、必然的にそうなってしまう。加えて、説明会に参加するみなさんはパンフレットを熟読している。

説明会の魅力は在学生による紹介だろう。実は、教員としても在学生の説明は興味深い。在学生が、SFCの魅力をどのように捉えているのかを垣間見ることができる。教員から見える世界と、学生から見える世界は、当然に異なる。そうした違いを見せてくれることがとても楽しい。なによりも在学生が話をすると、会場の空気が和む気がする。

そうこうしているうちに、自由質疑の時間になる。総合政策学部に関心のある来場者は総合政策学部のブースに集まり、環境情報学部に関心のある来場者は環境情報学部のブースに集まる。また、学生寮について説明するブースも別に設けている。複数のブースを渡り歩く来場者もいれば、一つのブースで一時間をエンジョイする来場者もいる。

この約1時間は、来場者と教員が向き合う時間である。教員には、学生生活を説明してくれた在学生が味方に付いてくれる。この時間は、なんとなく駆け引きのような空気に支配されるといってもよいかもしれない。

来場者のみなさんには、自分自身が取り組んできた研究活動へのアドバイスや、面接対策のヒントを期待している方もいる。その気持ちはよく理解できる。しかし、個別の研究活動や面接への助言に踏み込みすぎると、入学試験対策そのものを手助けすることになってしまう。だから、一人ひとりの熱意に敬意を払いながらも、私は少し別の角度から答えることになる。「正しい」資料の書き方を引き出そうとする質問もある。「正しい」書き方があるわけではありません、と答える。

こうして1時間のやり取りは、互いに言葉を選びながら進む、少し緊張感のある時間になる。私自身、隔靴掻痒な回答だなと自問することもある。説明会で私が伝えたいのは、個別の情報だけではない。むしろ、SFCというキャンパスをどのように読めばよいのか、その読み方である。学部やキャンパスが押し進めている教育研究に関する考え方は、キャンパスの教育と研究を支える様々な制度の中に埋め込まれているし、パンフレットのなかにもひっそりと書き込まれている。そうしたキャンパスの「読み方」を、説明会で紹介しているつもりだ。

説明会でも、学部紹介の資料でも、繰り返し伝えていることを、ここでも改めて紹介したい。総合政策学部は、これまで2回、「総合政策学とは何か」を考え、それを可視化するためのブックプロジェクトを展開してきた。2003年にはブックシリーズ『総合政策学の最先端』を四巻本として刊行した。そして2023年には、20年後の総合政策学を可視化する試みとして、ブックシリーズ『総合政策学をひらく』全五巻を刊行した。この二つのブックシリーズを読み比べると、この20年間で、SFCが総合政策学と捉える研究領域とその重点が変化していることが見えてくる。

SFCでは学生をしばしば「未来からの留学生」と呼んできた。その学生たちにどのような教育と研究の場を提供すべきかは、時代とともに変化していく。ただし、その教育のあり方をささえる理念や制度は一貫している。そうしたキャンパスの柔軟性と強靭性を感じてほしい。

説明会とは、大学が一方的に自分たちを説明する場ではなく、来場者のみなさんと一緒に、SFCというキャンパスの読み方を探る場なのだと思う。少し緊張感があり、時に隔靴掻痒でもある。だからこそ、私はこの時間を楽しんでいる。