4月から始まったNHKの連続テレビ小説「風、薫る」は、「当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込み、傷ついた人々を守るために奔走し、時に強き者と戦う」「明治という激動の社会を舞台に、幸せを求め生きるちょっと型破りな二人のナースの冒険物語」(NHK公式サイトより引用)です。ドラマは、中公文庫の「明治のナイチンゲール 大関和物語」を原案としたオリジナルストーリーであり、三上愛さん演じる“りん”と、上坂樹里さん演じる“直美”は、それぞれ“大関和”と“鈴木雅”をイメージしたキャラクターとされています。この原稿を書いている5月初旬、りんと直美は同級生たちと共に、設置されたばかりの看護婦養成所で、ナイチンゲールの看護覚え書を翻訳したり、学校の宿舎の環境を整えたりしながら、看護についての学びを深めているところです。毎年、秋学期の2年生の必修科目「在宅看護論」の初回で、日本の在宅看護の歴史のひとつとして、1891年の鈴木雅による派出看護婦会の設立を教えているので、録画しておいたドラマを見るのが毎晩の日課となっています。女性が自立するのが難しい時代に看護を学ぶ学生たちの様々な事情や、医学とは違う立場で健康を保ち回復を促進しようとする看護のあり方など、興味深い描写が多々あって、これからの展開も楽しみです。
近代看護の祖であるナイチンゲールがロンドンに看護婦養成所を設立したのは1860年で、その後日本にもナイチンゲール方式の教育が広まり、りんたちの養成所のモデルとなった桜井女学校看護婦養成所が設立されたのは1886年(明治19年)でした。文献によると明治20年代には全国に60か所の看護婦養成所があったそうです(平尾、2001)。その後、各地で養成される看護婦の質の保証が課題となり、1915年(大正4年)に看護婦規則が制定されて、国としての看護婦の資格が定まりました。慶應義塾に医学部が開設されたのは1917年、付属の看護婦養成所が開設されたのは1918年ですから、慶應看護は日本における看護婦の制度化とほぼ時を同じくして歩み始めたということになります。慶應における看護教育が開始されてから108年、看護医療学部が今年25周年を迎えるにあたり、歴史を紐解きながら、現在に通じる価値観を確認し、将来を展望するのに、毎日の朝ドラはよい機会となっています。大関和も鈴木雅も昭和まで生き抜いていますので、9月にドラマがラストを迎えるまで見届けたいと思っています。
なお、このドラマには、日本看護協会も協力しています。この原稿を書いている最中に、看護医療学部11期生の岡部卓也君が、日本看護協会「看護の日」イベントで、2026年度「忘れられない看護エピソード~いのち・暮らし・尊厳を まもり、支えるプロフェッショナル~」の最優秀賞を受賞されたという嬉しいニュースが飛び込んできました。漫画やアニメにもなっていますので、ぜひ皆様ご覧くださいませ。