慶應義塾大学薬学部の花岡健二郎教授らの研究グループは、蛍光イメージングで汎用されるローダミン蛍光色素の新たな蛍光特性を発見しました。
ローダミン蛍光色素は一世紀近く前から知られている蛍光色素で、生きた細胞や動物での蛍光イメージングに使われてきました。蛍光イメージングにおいて、観察したい生体分子を認識して蛍光がoffからonへと切り替わる蛍光プローブは必要不可欠で、1980年代から蛍光プローブ開発が盛んに行われてきました。ローダミン蛍光色素の蛍光特性は調べ尽くされたと考えられていましたが、本研究グループは、ローダミン蛍光色素において分子内で「ねじれ」を起こすことで蛍光をほぼ完全に消すことに成功し、この現象を立体反発誘導型TICT(steric repulsion-induced twisted intramolecular charge transfer: sr-TICT)と名付けました。これをもとに、主要な薬物代謝酵素であるCYP3A4活性によって100倍以上の大きな蛍光上昇を示す蛍光プローブの開発に成功しました。さらにこの蛍光プローブを用いて、ヒトiPS細胞から分化させた成熟肝細胞および腸管上皮細胞の分離・精製に成功しました。
今後、開発した蛍光プローブが創薬や再生医療へと貢献することが期待されます。本研究成果は、2024年2月16日(米国東部時間)に国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。