岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域の原田奈穂子教授、学術研究院医歯薬学域(医)の香田将英特任准教授、慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室の野村周平特任准教授は、2022年に警察庁によって実施された自死(自殺)統計の集計方法の変更が、どのように影響を与えたかを評価しました。2010年1月から2022年12月までのデータを用いて分割時系列解析を行い、新方法の導入前後の自死者数の水準と傾向の変化を調査しました。2010年1月から2021年12月までの理由が判明している死亡者数は274,274人、新たな集計方法が適用された後の2022年1月から12月までの死亡者数は28,165人でした。理由が特定された事例については、2021年は、月あたり平均1,723件の推移であったのに対して、2022年の集計方法変更後は統計学的な分析を行ったところ、過去12年間の傾向と比べて839件(95%信頼区間639~1,039件)の増加が確認されました。これは、過去の傾向と比べて集計値の水準に変化があったことを表しています。
この傾向は全てのカテゴリー(家庭問題、健康問題、経済・生活問題、勤務問題、交際問題、学校問題、その他の理由)で一貫していました。理由不明の事例に関しては、2021年が月あたり平均485件の推移であったものが、2022年は過去の傾向に比べて167件(95%信頼区間-225~-110件)減少していました。
本研究結果は、2022年前後の単純な比較ができなくなった一方で、「理由不明」は減少しており、中長期的にみれば、今回の変更は、現代の自死の理由解明につながることが期待されます。本研究成果は、2023年12月14日、米国の医師会が発行する「 JAMA Network Open 」に掲載されました。