慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)の三浦光太郎助教(研究当時。現在、平塚市民病院循環器内科医長)、同スポーツ医学総合センターの勝俣良紀専任講師、Brigham and Women’s Hospital及びHarvard Medical Schoolの八木隆一郎リサーチフェロー、獨協医科大学埼玉医療センター板橋裕史准教授、東海大学医学部医学科総合診療学系総合内科学及びBrigham and Women’s Hospitalの後藤信一講師らの研究グループは、慶應義塾大学病院を含めた日米3施設の心電図を用いて、新しい深層学習法による心房中隔欠損症の診断モデルを作成し、その診断の有効性を明らかにしました。
心房中隔欠損症は最も一般的な成人先天性心疾患の一つであり、未治療の場合は心房細動、脳卒中、心不全などの不可逆的な合併症を起こすことが知られています。しかし、合併症を起こすまでは、臨床症状が軽いため、健康診断で偶然発見されるか、症状の出現とともに指摘されるケースが多くあります。早期発見と早期治療が重要であり、有効なスクリーニング戦略の開発が求められています。一般的に心エコー検査が正確な診断方法とされていますが、この検査は時間や手間、費用がかかるため、症状のない多くの人に対して大規模な実施が難しいとされてきました。
心電図は心エコーと比較して非常に短時間(約1分程度)で行うことができ、大規模な集団で検査を行うことが可能です。一般的に心電図異常により心エコーを受けるべき人が選択されますが、心房中隔欠損症は心電図が正常であることも多く、既存の基準を元にしたスクリーニング方法では見逃されるケースが多くあります。
今回の研究では、1枚の心電図だけから深層学習法のモデルを使用して心房中隔欠損症を高精度に診断予測できることが示され、こうした技術を検診などの一般的なスクリーニングに導入することで、早期診断や早期治療につながり、より良い医療を提供できる可能性が考えられます。
この研究結果は2023年08月17日(日本時間)に eClinical Medicine 誌で公開されました。