微細なパーツを規則的に組み上げ、自然にはない力学特性を実現する人工材料は通称、メカニカルメタマテリアルと呼ばれ、その調整可能な機能性は近年注目を集めています。これまでにさまざまなタイプが提案されてきましたが、その多くは精緻なプログラムで予測通り動作するように設計され、構成要素のランダム性や不完全さが機械的性能に与える影響はあまり明らかにされてきませんでした。
慶應義塾大学理工学部機械工学科の佐野友彦専任講師、川田智之(2022年3月卒業)とフランス国立情報学自動制御研究所の研究グループは、ランダムに積み重ねられた円筒シェルの機械的性能に焦点を当て、これらのシェルが圧縮される際に機械エネルギーを吸収・蓄積できることを、物理実験とコンピューターグラフィックスに基づくシミュレーションを組み合わせて、明らかにしました。これはシェルの大きな変形と再配置、スナップフィット、摩擦をうまく活用することで実現されています。ランダムにシェルが配置されているにもかかわらず、このシステムは摩擦と形状によって統計的に堅牢な機械的性能を示すことがわかりました。この結果は、しなやかな構成要素の再配置によって、多様で予測可能な機械的な応答がもたらされる可能性を示しています。
本研究成果は2023年8月25日(ロンドン時間)、国際誌『Communications Materials』に掲載されました。